Sound
浦島五月

<20世紀Myベスト>

山下洋輔トリオ「ゴースト」

 山下洋輔トリオを初めて聴いたのは、レスター・ボウイーが盲腸炎をこらえて来日した時にアート・アンサンブル・オブ・シカゴの前座として登場した円山公園の白昼ライブだった。いつまでもグズグズとマイクのセッティングに手間取っていた小太りでハゲ頭の設営がアルトサックスをいじり始めたと思ったら、困ったことにこのおっさんはとうとう音まで出しはじめた。プォ−と吹き始めたときにはステージから引き摺り下ろされるかと思っていたら、ピアノがピュンピュンと入りドラムもトコトコトコと合わせてきた。山下洋輔・坂田明・森山威男のトリオだった。中村誠一のいた頃が最も山下洋輔トリオらしいのかもしれないし、小山翔太が入ってからより洗練されたのかもしれないが、どこか小節を効かしたような坂田明のサックスと唄うかのような森山威男のドラムで固めたあのトリオをベストとしたい。代表作は「キアズマ」あたりとされるだろうし、「マイルストーン」も面白かったが、アルバート・アイラーのカバーなのに演歌か童謡のように響いてきた「ゴースト」をやっぱり一番にしよう。自分の音楽のルーツを渡しの船頭歌としていた坂田明であってこそ、と思いたい。セシル・テイラー、アンドリュー・シリル、ジミー・ライオンズのトリオがビチョビチョのブルースに聞こえてきたときのように、きっと潮だみ声の船歌だったのだ。

ビートルズ「レディー・マドンナ」

 マイナー志向の20世紀ベストではあっても、20世紀の音楽と言えばビートルズを外すわけにはいかないだろう。今になって振り返ってみると、ビートルズというのは偉大なロックバンドなどではなくコーラスグループ・ボーカルグループという印象が強い。好みだけからいうと、ベースとドラムとギターでチャック・ベリーやリトル・リチャードをそっくりそのままカバーした初期のものが最も活き活きとして聞こえる。歌詞を十分に理解できれば受け止め方が変わるのかもしれないが、代表作とされバックにバンドの入った完璧版「サージェント・ペパーズ」もジミ・ヘンドリックスによるカバー・バージョンの方がアドリブもあって面白い。ローリング・ストーンズがビートルズナンバーをやるとどんな風になるのだろうか。さて、ビートルズのベスト、歴史的に「ホルド・ユア・ハンド」と割り切る手もあるが、ここはマイナー志向の断愚流通信ということでちょっと外して「レディー・マドンナ」はどうだろう。イントロのピアノやサックスが小気味よく、後期のビートルズの中では気に入っているだが、これはいわゆるビートルズナンバーとして認めてもらえるのだろうか。

ジミ・ヘンドリックス「ライク・ア・ローリングストーン」

 ジミヘンについては、良いのも悪いのも、スタジオもライブも、公式版も海賊版も、みんな大好きといった方がよさそうだ。「ストーン・フリー」「パープル・ヘイズ」「ヴードゥー・チャイル」などオリジナル曲もいいけど、「ヘイ・ジョー」「ジョニー・B・グッド」「ブルー・スウェード・シューズ」などのカバーバージョンもまたいい。活動のピークは僅かの期間しかないが、その内容はロックンロール・R&B・デルタブルースへと遡ることができるので20世紀的と言っても問題はないだろう。「キャット・フィッシュ・ブルース」みたいにマディ・ウォーターズのコピーの如く始まるジミヘンのブルースは、「レッド・ハウス」や「ヒア・マイ・トレイン」など聴いているうちに、マディ・ウォーターズを通りすぎてしまい遥かロバート・ジョンソンのところまで連れて行ってくれた。一方、どこかジャズ的ともいえるそのアドリブに囚われているうちに、気がつくといつのまにか21世紀まで連れて来てくれたのだ。ギル・エヴァンスが「ストーン・フリー」「リトル・ウィング」などジミヘンの曲をアレンジし繰り返し取り上げたのも時代を超えたアイデアを見出していたのだろうか。残念なのは、彼がサム・クックやリトル・リチャードのバックで演っていたということだが、どの曲のどのパートなのかよく分からない。また、マイルス・デイヴィスもジミヘンと共演を望んでいたそうが、マイルスはジミから何を引き出そうとしていたのだろうか。或いは、既に全てを出し尽くしていたジミに何かを注ぎ込もうとしていたのかもしれない。

 さて、ジミ・ヘンドリックスのベストなど決めようが無いのだが、20世紀にこだわりつつちょっとマイナー志向で思いついたのが「ライク・ア・ローリング・ストーン」。何しろ、“ローリング・ストーンにモスは生えない”とか、“砂ざれ石に苔の生すまで”、とか、“パパはローリングストーン”とか、無価値だったローリング・ストーンに20世紀的価値転換をしたのだから………。モンタレイでのライブで、LPではどちらが裏だったか、オーティス・レディングと片面ずつの録音だった。そして、ここではR&Bだけではなく20世紀的詩人ボブ・ディランのこの曲を取り上げている。ディランの曲は、別のところで「ウォッチ・タワー」も何度かやっているのだが、この曲が入っているのはこの不吉なLPだけのようだ。

ジョン・コルトレーン「ロシアン・ララバイ」

 ジャズの20世紀ベストなどと考えると、1900年生まれのルイ・アームストロングあたりがちょうど都合がいいのだろうが、これは別格としてここでは外してしまうことにしよう。そして、代わりに同じトランペッターのマイルス・デイビスをエントリーするのが無難なのだろうか。古さも新しさも感じさせないカウント・ベイシー、ベイシーバンドの花形レスター・ヤング、レスターの追っかけ4倍速チャーリー・パーカー、パーカーにベッドを貸したマイルス・デイビス、マイルスクインテットで名を挙げたヘタくそジョン・コルトレーン、コルトレーンを慕ったアーチー・シェップ、ポストコルトレーンのウェイン・ショーター、ここまでつなぐとほぼ半世紀。誰がベストでもよさそうだが、生で聴いたのは電気のマイルスだけで、演奏よりも音の大きさだけが印象に残っている。そこでマイナー志向の断愚流通信、マイルスも外してしまってアーチー・シェップに決めたくなるし、ビバップ革命の中心チャーリー・パーカーこそがモダンジャズの全てとも思うのだが、個人的な思い入れからするとここはやっぱりジョン・コルトレーンにしよう。

 コルトレーンといえば「マイ・フェバリット・シングス」、タイトル通りに本人も気に入っていたようで晩年に至るまでライブ録音が残されている。そして、私が初めてコルトレーンを聴いたのも、多分、「チム・チム・チェリー」でなかったならばこの「マイ・フェバリット」だった。ジャズなんて聴いたこともない頃の微かな記憶を辿ると、短波放送のトランジスタラジオをいじっているとき、コルトレーンの特集番組もしかしたら追悼番組を流していて、この奇妙な曲のライブに出会ってしまったのだ。今になって考えると、ライブならアトランティック盤ではないし、その頃の「ヴィレッジ・ヴァンガード」にはこの曲は入っていなかった筈だし、晩年のような悲壮感も無いとなると、あれはニューポートからのライブだったのだろうか。そうなるとドラムはエルビン・ジョーンズではなくロイ・ヘインズということになる。

 「フェバリット」のマイベストはこのライブに決めるが、20世紀ベストとはいかない。コルトレーンの来日公演は彼の死の前年1966年、連日のハードな公演日程、ライブを聴いた筒井康隆は「もうたくさんだ」と語っている。この公演の録音も聴いたことはないのだが、翌年の「エクスプレッション」には深く鎮まった印象がある。“聖者になりたい”と答えた、この晩年のコルトレーンこそがコルトレーンであったかもしれない。しかし、お気に入りは「ヴィレッジヴァンガード」、マッコイ・タイナーにエルビン・ジョーンズ、ベースはまだレジー・ワークマン、そしてコルトレーンとこの時期はエリック・ドルフィーが加わっている。「ヴィレッジ」のコルトレーンは、ドルフィーのバランス感覚にコントロールされているような印象があり、コルトレーンよりドルフィーが気に入っている。アトランティック時代の「ジャイアント・ステップス」・ブルーノートの「ブルートレーン」など、コルトレーンにはその時期その時期のよさがあるのは勿論だが、サウンドが劇的に展開したのはマイルスのバンドからセロニアス・モンクのグループに加わってからではないだろうか。この時期のカルテット(モンク、トレーン、ウィルバー・ウェア、シャドウ・ウィルソン)は、ファイブ・スポットのライブCDが出ていたはずだが、残念ながら聴く機会がなかった。そこで、その少し後、タッド・ダメロンの「グッド・ベイト」、バラード「アーニー」、アップテンポの「ロシアン・ララバイ」などがプレスティッジから“ソウル・トレーン”として出ているので、この中から「ロシアン・ララバイ」を断愚流通信的二十世紀ベストとしよう。なにしろ、モンクの洗礼を受けて聖者への道を歩みはじめたコルトレーンの子守唄だから。


寺沢裕久

Progressive
Rock band、
"SCOPE"Boss

私が影響された音楽(ロック)を中心にアルバムベスト10を
独断で選ばせていただきました。
現在購入可能なミュージシャン達ばかりです。

1)YES/危機
2)PINKFLOYD/ファイナルカット
3)KINGCRIMSON/アイランド
4)GENESIS/幻惑のブロードウェイ
5)DEVIDSYLYIAN/シークレット・オブ・ザ・ビーハイブ
6)ELP/タルカス
7)DIK DIK/ある女性に捧げる愛の歌
8)BEATLES/サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
9)BANKO/ヌード
10)ATOLL/サード

次に曲ベスト10も独断で選ばせていただきました。
1)PETERGABRIEL/マーシー・ストリート
2)PFM/ジョセファン・ベカー
3)PFM/人生は川のようなもの
4)KINGCRIMSON/レタース
5)KINGCRIMSON/ディシプリン
6)ATOLL/夢魔
7)MAGMA/未来からの鼓動
8)YES/危機
9)MARILLION/イースター
10)ASIA/ウィズ・アウト・ユー

全て、私がバンド活動を行う上でかなりの影響を受けた曲ばかりです。20世紀といってもこの30年ぐらいのものばかりですが。ワースト10も考えたのですが、しょせん人が創造したものですので特に見あたりません。強いて選ぶなら細分化された産業ロックのなかリミツクスされたアルバムは、ベスト盤よりも好きになれません。


解 竜馬 自意識系(もしくは、物語的な音楽)
チック・コリア
「サ−クル ライブ」「ナウ・ヒ−・シングス ナウ・ヒ−・ソブス」
キ−ス・ジャレット
「ケルン・コンサ−ト」「セレシャル・ホ−クス」
リッチ−・バイラ−ク
「ELM」
スタンレ−・カウエル・トリオ
「イリュ−ジョン ス−ツ」
ジョ−ジ・アダムス&ドン・ピュ−レン
「ミュ−ジック・エクスカ−ション」
ミュ−ジック・リべレ−ション・アンサンブル
「クロス・ファイア」
山下洋輔
「ライブ・アット・スイ−トベイシル」「リベンジ・オブ・ピカソ」
「クアイエット・デイズ」「ストリ−ム」(「スパイダ−」収禄)
「さくら」その他
ニュ−クリア「we'll talk about it later」
ソフト・マシ−ン
「4th 」
岡林信康
「私たちの望むものは」
泉谷しげる
「春夏秋冬」
井上陽水
「傘がない」「最後のニュ−ス」
ブランキ−・ジェット・シティ
「悪いやつら」
ラルク
「侵食」
Cocco
「けもの道」
バルト−ク
「弦楽四重奏曲」
モ−ツアルト
「交響曲第40番」「アイネ・クライネ・ナハトムジ−ク」
石井真木
「Lost Sound」
フォ−レ
「ヴァイオリン・ソナタ」
フランク
「ヴァイオリン・ソナタ」
ディ−リアス
「ヴァイオリン・コンチェルト」
ラフマニノフ
「ヴォ−カリ−ズ」
エリック・サティ
三善 晃
「弦楽四重奏曲第2番」「ヴァイオリン・ソナタ」
クロノス・カルテット
「morango almost a tango」(Thomas Oboe Lee作曲)
「amazing grace」(Ben Johnston作曲)
ジェファ−ソン・エアプレ−ン
「Bless its pointed little head」(ライブ)
It's a beautiful day
「It's a beautiful day」
キング・クリムゾン
「リザ−ド」
ビル・ブラフォ−ド
「ブラフォ−ド・テ−プス」
ピ−タ−ハミル(ヴァン・ダ−・グラフ)
「クワイエット・ゾ−ン プレジャ−・ド−ム」「ポ−ン・ハ−ツ」
エマ−ソン・レイク&パ−マ
「1st]
ニュ−・トロルス
「コンチェルト・グロッソ?・?」
フィッシュ
「Vigil in a wilderness of mirrors」(邦題 虚構の鏡)
キュア−
「フェイス」「ポルノグラフィ−」「ブラッド・フラワ−」
リディア・ランチ
「Gloomy Sunday」(Josh's Blair Witch Mix収録)
ペイル・セインツ
「コンフォ−ツ オブ マッドネス」
マイ・ブラディ・バレンタイン
「ラブレス」
スロウ・ダイブ
「スロウ・ダイブ」
ニルバ−ナ
「Smell Like Teen Spirit」「Come As You Are」(Nevermind 収録)
レイジ・アゲインスト・ザ・マシ−ン
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシ−ン」その他
リンプ・ビスキット
「プレゼンツ」

非自意識系(もしくは、反物語的な音楽または非物語的な音楽)
キャプテン・ビ−フハ−ト
「Shiny beast」
マイルス・デイビス
「Bitches brew」「アガルタ」その他
チック・コリア
「インプロヴィゼ−ション?・?」
佐藤允彦・ゲ−リ−・ピ−コック・富樫雅彦
「WAVE1・2・3」
Strata Institute
「Cipersyntax」
ア−ト・リンゼイ&ピ−タ−・シェラ−
「pretty ugry」
キャバレ−・ボルテ−ル
「キャバレ−・ボルテ−ル」
スロビング・グリッスル
「セカンド・アニュアル」
イ−スト・オブ・エデン
「snafu」
ヘクタ−・ザズ−
「Geologies 」
キング・クリムゾン
「THRaKaTTak」「太陽と戦慄」
ヤン・ガルバレク
「ワ−クス」
ブランドX
「異常行為」
クアイエット・サン
「クアイエット・サン」
伊藤弘之
「ジェミナイ」(現代音楽)
http://www.netlaputa.ne.jp/~hyama/db/comp.html 
フレッド・フリス ビル・ラズエル チャ−リ−・ヘイワ−ド
「ファニ−・バレンタイン」
デレクベイリ− ジャマラディ−ン・タクマ カルビン・ウエストン
「Milakle」
ニルバ−ナ (Nevermind 収録)のノイズ

「21世紀に残す・・・」ということで、自分の領域を振り返ることが出来た。次から次へと出てくる作品に、自分でも戸惑った自分がどんなものが好きなのか、そして出会っていない作品が、幾つもあるのだろうという思いに駆られた。音楽に限ってみても、その量と細分化されたジャンルは膨大だ・・。そしてその深度も異常なまでに深い。いつから、これ程の、音楽シ−ンが出来上がってきたのだろうか。選ぼうとすると、まさに大海の中の「溺れた魚」に等しい思いだった・・。それが他の分野について、視てみようとすることさえはばかられた理由の一つだ・・。
「文化」は、どうしようもなく化け物になった・・。そんな中で、「国家」の問題が、酷く小さいものに見えた。現実の国家は實に強く強大だが、その変化の度合いがあまりに無い。変わったのは、その下に生きている、私たちの文化的観念と感覚だ。ITを媒介に探っていけば、音楽の深度と様相は測りしれないほどの屈折と相貌を持っている。人間の作る文化はまさに怪物、だ。エリック・サティは、いみじくも言ったという「音楽は安らぎを与えるもの」と。この「安らぎ」が、聴く側に多くの形で、そして時代と経験とそれに引き合うことを越えた超越論の中で、自分のなかにあることがきっと望ましい「文化」の在り方なのだと、今は思っている。