♪ このアルバム、この1曲 by 浦島五月  vol.1

♪ジャケット・アート・コレクションvol.3からの続きですが、「この1曲」のほうに重点がありますので、
このタイトルにしました/April 30, 2008♪

, Sam Cooke/ Charles Mingus/ B. Fontaine /Ella Fitzgerald Eric Dolphy/Keith Jarrett

サム・クック Jesus Gave Me Water

 蓄音機に耳を傾けるビクターの犬の名前を忘れて思い出せない。始めて我家に「ステレオ」が入ったとき、この犬のフィギュアとプラターズのLP盤が付いてきた。以来、ソウル系ボーカルをよく聴いている。ゴスペルグループだと男声のカウンターが入るのが一般的で、女声を加えたプラターズは例外的な編成のようだ。伝統的なスタイルのゴスペルグループの中で、サム・クックがトップを張るソウルスターラーズのスペシャリティ盤2枚は、映画ブルースブラザースのジェイムス・ブラウン牧師のシーンを想い浮かべながら、いつの間にか私のBGMの一つになってしまった。
Sam Cooke /Soul Stirrers

 

チャールズ・ミンガス  Changes

 親分肌というのだろうか。若手を見つけてきて、一人前になると独立させるタイプの人がいる。アート・ブレイキーやこのチャールズ・ミンガスがそうだ。ジャッキー・マックリーンやエリック・ドルフィーそしてこのジョージ・アダムスもミンガススクールの一員ということになる。
 実は、ミンガスの印象としては重くて粘っこいイメージがあって、体調のいい時にしか聴けないところがある。これは、ミンガスのサウンドはどれも密度が高いせいで、ライブ好きの私でもピテカントロプスエレクトス/プレゼンツミンガス/クンビアなどミンガスはスタジオ録音の方が充実しているように思う。既にここでは、後にアダムス/プーレンの双頭コンボを組むドン・プーレンも加わっていて、フリーのようでありながらコントロールされた重厚な構成になっている。アダムスのリズムアンドブルース風のボーカルも聴くことができる。 
Charles Mingus/
'Changes One &Two

 90125
 

Bブリジット・フォンテーヌ l’ete(夏).

宙に舞った彼の意識が戻るとすぐ、タンデムしていた筈の私のことを一番に心配していたそうだ。彼の混乱した記憶では、凍てついた冬の夜、彼女のアルバムを私に届けてから事故に遭うまでの時間が消失していたのだ。実際は、単車に乗せたのは私ではなく、別の人物を送り届けてからの出来事だったようだ。 

この時、マッコイ・タイナーの“サハラ”と引換えに彼はこのブリジット・フォンテーヌの奇妙なフランス語の歌詞の入ったLP盤「を残していった。冷え込んだ夜はラジオからこの夏の歌が流れてくるような気がする。いわゆるシャンソンではない。バックは前衛派といわれたレスター・バウイーやジョセフ・ジャーマンそしてマラカイ・フェイバースなどで編成されたアート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEC)で、これも奇妙だが洒落たキャスティングになっている。AECのファンにとって評判はよくないが、どうもフランス人は「前衛」が好きのようだ。そういえば、チャーリー・パーカーは演奏を聴きに来ていた大哲学者サルトルに“あなたの楽器は何ですか”と尋ねたそうだ。
B.Fontaine/ Com
me a la Radio(ラジオのように)

 

エラ・フィッツジェラルド Nearness of You

このくらいのテンポだと、大きな体ごと鳴らしているようにゆとりを持って出るエラの声が心地よい。もう50年も前の録音で、エラは40台、サッチモは1900年生まれというからこの時は50台半ばになる。まだエイトビートも入らず、二人ともちょうどいい時期の吹き込みだ。
歌詞が分らないのに、ベルリンの“Our Love is Here to Stay”を聴いて、聴き足りない思いがした。それが、このアルバムの後にはドラムスが入れ替わった続編の“アゲイン”も吹き込まれていて、たっぷりと聴くことができる。リズムも豪華版というべきか、オスカー・ピーターソンp、レイ・ブラウンb、バディ・リッチd、そしてハーブ・エリスgが加わっているのもいい。もちろんサッチモはトランペットも吹いているし、続編にはスキャット・デュオ(サボイ)などもあって面白い。  
Ella Fitzgerald/Ella and Louis

エリック・ドルフィー Status Seeking

熊野神社前の電停を東に入った所にあったサンタクロースというホールのような店があった頃のこと。近くのヤマトヤに入ると激しいピアノが心地よかった。セシル・テイラーかと思って聴いていたがジャケットに名前は挙がっていなかった。フロントラインは、エリック・ドルフィーasとブッカー・リトルtp、バックはエド・ブラックウェルdsにリチャード・デイビスbそしてピアノはマル・ウォルドロンだった。歴史的なファイブスポットのライブレコーディングで、その拾遺というべきアルバムだった。ドルフィーがまとめあげたメンバーは鬼気迫るプレイを展開し、全てのメンバーにとってベストレコーディングと言っていい。“at the Five Spot”、“at the Five Spot vol.2”、“Memorial”、この“Here and There”、まとめて聴きたい。このアルバムではドルフィーのバスクラによる“God Bless the Child”も聴くことができる。コルトレーンのヴィレッジバンガードも彼の参加によるところが大きいように感じる。  
Eric Dolphye/Here and There

キース・ジャレット Bye Bye Blackbird

 大きな角がついた牡鹿の頭の看板がジャケットにも写っている。キース・ジャレットの生まれたアレンタウン(ペンシルバニア)にあるその名も“ディアヘッド”というクラブでのライブ。彼が初めて仕事らしい仕事をしたクラブでの久々の演奏だったようだ。梅雨のような靄にかすむコロニアル風のホテルが南部かと錯覚させるモノクロ写真にポール・モチアンのドラムが似合う。レギュラートリオでビシビシと鞭を入れるように煽るジャック・ディジョネットに慣れた耳には P.モチアンのフワフワとして解き放つような波動が心地よい。湿度のせいなのか、ドラムのせいなのか、生まれ故郷ということからなのか、キースはずいぶんとリラックスしているようで、随分と唸り声が続いている。今年もJ.ディジョネットdsにゲイリー・ピーコックbのトリオで来日したが聴くチャンスがなかった。 

At the Deer Head Inn / Keith Jarrett


「このアルバム、この1曲 vol.1」2008年4月30日