ジャケット・アート・コレクション

 

    今回は藤中浩樹、浦島五月、岡崎凛が担当しました。

 
AbbeyRoad
アビー・ロード/ビートルズ

ビートルズの事実上最後のアルバム。試行錯誤を繰り返したゲット・バック・セッションも棚上げし、最後のアルバムとして製作した。内容は周知のごとく持てる力を集結して作り上げた傑作であるが、ジャケットも劣らず名作になった。4人が1列に同じ方向に歩いているが、その容姿はバラバラである。もはや同じカテゴリーを共有できなくなったということか、これからのソロ活動を暗示するかのようである。撮影場所はロンドン、セント・ジョンズ・ウッドのアビー・ロード。撮影者はイアン・マクミラン。1969年発売。

 
90125
 
 
90125/イエス

ドラマ・ツアー後解散したイエスのクリス・スクワイアとアラン・ホワイトがトレバー・ラビンという新しい血を導入して再結成した新生イエスの第一弾アルバム。キーボードにトニー・ケイが、ボーカルにジョン・アンダーソンが復帰したにもかかわらず、モダンでポップでそれでいてプログレしている新しいイエスを象徴したサウンドとジャケットである。幾何学的なデザインと無機質な色彩はトレバー・ラビンのメタリックなサウンドをよく表している。デザインはギャリー・ムーアット。1983年発売。

AssaultAttack
 
黙示録/マイケル・シェンカー・グループ

マイケル・シェンカーがボーカリストとして元レインボーのグラハム・ボネットを迎えて製作したグループ3枚目のアルバム。本来ならばドラムはコージー・パウエルだったのだが、グラハムが加入後まもなく脱退。グラハムも後を追うようにアルバム完成後脱退した。ドタキャンの末完成したアルバムだが内容はマイケル・シェンカー・グループの最高傑作となった。燃えるようなロック魂をそのまま表現したデザインである。1982年発売。

StickyFingers
スティッキー・フィンガーズ/ローリング・ストーンズ

ローリング・ストーンズ・レコーズの第一弾アルバム。アンディー・ウォーホールのデザイン。本物のジッパーを開けると中にはギャランドゥが、インナー・スリーブはブリーフ姿、裏ジャケはジーンズのおしりとなっている。このジャケットが当時のストーンズのサウンドを表現しているかどうかはさておいて、サウンド的には名盤である。アナログ・スペイン盤はデフ・ジャケで缶詰から指が出ているデザインで、こちらの方がタイトルにマッチしているが悪趣味である。1971年発売。

Flashes
フラッシュ/フラッシュ

スティッキー・フィンガーズが男性の下半身だったのに対し、こちらは女性の下半身である。エロかわいい。サウンドはジャケットのイメージとは異なり(?)明るいジャズ・ロックである。イエスのファースト、セカンド・アルバムの延長線上にあるが、ピーター・バンクスが求めていたジャズ・ロックがバンド“フラッシュ”にある。デザインはヒプノシス。1972年発売。

ZEP4
4/レッド・ツェッペリン

レッド・ツェッぺリンの4枚目のアルバム。薪を背負った老人の絵が廃虚の壁にかかっている。アルバムにタイトルの記載がないため“Untitled”とか、インナー・スリーブやレコード・レーベルに4人のメンバーをイメージした4つのマークがあるので “フォー・シンボルズ”とか呼ばれている。インナー・スリーブには“天国への階段”の歌詞が、見開きにはそのイメージ図が描かれている。サウンドはロックン・ロールやフォーク・ソング、ハード・ロックと様々であるが全体的に暗いイメージがありジャケットにマッチする。1971年発売。

STORMBRINGER
嵐の使者/ディープ・パープル

第3期ディープ・パープルの2枚目のアルバムにしてリッチー・ブラックモアがこれを最後に脱退するきっかけになったアルバムである。このアルバムでは初めてメンバーの写真が使われておらず、その分芸術性の高いアート・ワークになった。基本的なデザインは各国盤共に同じであるが、イギリス盤は全体的に赤味がかかっておりDEEP PURPLEとSTORMBRINGERの文字が大きく、他と比べると嵐のイメージが強い。シングル・ジャケットであるが表と裏を合わせてひとつの絵になっている。1974年発売。

(藤中浩樹)

onpu

PacificJazz

“Assorted Flavors Of Pacific Jazz”

何となく印象に残っている写真が三つあります。どれも、写真家の写真集とか作品集とかに掲載されているものではありません。一つは、エチオピア皇帝の親衛隊が盛装して、長い槍を立てて駱駝に跨った写真です。クーデタで皇帝が退位する頃に週刊誌か何かで見たのだと思います。駱駝の足許から槍の遥か先へ昇って行く、憧れを映像化したような写真でした。もう一つは、大日本帝国海軍の航空母艦の機関砲手らしきセーラー服の兵士が明けきらない海を背景にしたスナップ風の写真です。艦内の薄暗さと海の薄明るさが不安感と期待感を訴えかけてきました。どこで見かけたのか、二度か三度か目にした記憶があります。

三つ目の写真が、おかっぱ頭にワンピース姿で腕にバッグを引っ掛けてアイスクリームを垂らしている東洋系の少女を撮ったこの写真です。三つの写真のうちでこれだけが私の手許にあります。“Assorted Flavors Of Pacific Jazz”とタイトルをつけられたパシフィックジャズ1950年代のサンプラーのジャケット写真なのですが、モデルもカメラマンも何もクレジットされていません。多分、西海岸の中国人の子供なのでしょうが、これを見ていると妙な懐かしさと同時に不思議な諦めのような落ち着きを与えてくれます。

実は、このサンプル盤に収録されているアルバムは一枚も持っていません。ジャズとは言いながらイーストコーストとは別世界で、サンプル盤だけで満足してしまいそうです。サイ・タフ/ジェリー・マリガン/バド・シャンク/ショーティー・ロジャース/チェット・ベイカー/リチャード・ツワージク/ビル・パーキンス/チコ・ハミルトン/ローリンド・アルメイダなど個性的なミュージシャンが収められていて、一気にパシフィックジャズの世界へ引きこまれます。

(浦島五月)


CircleWaltz
Don Friedman Trio/Circle Waltz
(1962年録音)

以前CD紹介した作品ですが、昔から、見れば見るほどヘンな絵だと思っていました。左下にサインがあるFred Schwabが作者ということですが、この人物については、ウェブ上で調べる限り全く情報が見つかりません。検索であれこれ調べたところ、やはり私と同じような疑問を持ち、調べた方はいたのですが、やはり分からずじまいのようです。カバーデザインを手がけたKen Deadoffは著名なデザイナーらしく、多くのジャズレコードのジャケットを担当しており、1961年にグラミー賞Best Album Cover部門で受賞(Peter Bocage/NEW ORLEANS:THE LIVING LEGENDS)という記録がありました。謎の画家の作品は、ご覧の通りシュールレアリズム趣味が顕著な絵で、水彩画に印刷物をコラージュしたと思われます。下部に落書きのようなVANILLA(逆さまになっている)、意味不明のCHO-CHOの文字があり、女体の胴らしきもの胸辺りに小さな両手が貼り付けられ、フロッタージュ(擦り出し)かコラージュかよく分からない歯車が見えます。ユーモラスで斬新とも言えれば、陳腐で悪趣味とも言える、何とも怪しい絵なのですが、歴史的名盤となったこのアルバムの顔にとして定着しています。(蛇足ですが、Don Friedmanについては、最近のトリオ作品を聴かずにCD紹介してしまったことが気になっています。)

Naked
Talking Heads/Naked
(1988年)

Talking Headsのスタジオ録音としては最後のアルバム。賛否両論あるようですが、ファンキーでやたら明るい半面、じめっとした暗さが見えてくるのが、いかにも彼ららしい作品。ジャケットの内スリーブの見えにくいところに、“If there is no tiger in the mountains, the monkey will be king‐Chinese Proverb”(「虎のいない山では、猿が王になる−中国の諺」)と書かれています。覗き込まないと読めないところにわざわざ文字があるとは、随分見え透いた手で誘うものだとも思ってしまいます。ここは相手の期待通り(?)ジャケットの猿は何を、または誰を意味しているか考えてみました。この諺は、特に秀でた者のいないところで、つまらない者がリーダーとなることを例えたもの。そこで思い出したのが1988年の大統領選で選ばれたGeorge H.W.Bushことパパブッシュです。(David Byrneの歌う名曲、“Don't Worry About The Government”を思い出してしまいました)このアルバムが世にでたのは選挙前ですから、この推測はは全くのハズレかもしれません。正解があるなら知りたいところです。諺の元の形は「山中无老虎、猴子称大王」と思われます。「猴」はサル、「无」を「無」と置き換えた形もありました。

Word of Mouth
Jaco Pastorius/Word Of Mouth
(1981年)

夕日の連続(断続?)写真を使ったこのジャケットを眺めながら、恐る恐るLP盤に針を落としたのが忘れられません。自分が聴きたい音楽は絶対にここにあるという期待と、それが裏切られるかもしれないという不安。そして結局、この身勝手な期待ゆえに、最初はこの作品の良さを受け入れられませんでした。今は大好きなToots Thielemansのハーモニカの音にも違和感を覚えました。Jaco Pastoriusの新譜に、ただひたすら自分の「彼岸」を求めていた…ベタ惚れと思い込み故の失敗でした。当時の自分のバカさ加減には呆れるばかりですが、感情に流されてレコードを手離すことはありませんでした。ジャケットのデザインはタイトにまとまっていますが、中身のほうは、まるで彼の部屋に散乱したレコードや楽器が、思い思いの音を鳴らしてる感じです。次から次へと飛び出すアイデアを盛り込み、永遠に工事中のテーマパーク。しかし、どこを取っても彼の色に染まっています。そんなこのアルバムを見るたび、「神々しい」というご大層な言葉が浮かんでしまう自分は、まだ彼に「ベタ惚れ」のままなのかもしれません。

(岡崎 凛)

                                   Vol.2に続く…