ジャケット・アート・コレクション

 

今回は全て浦島五月が担当しました。(2007年1月)
♪ この1曲・このアルバムジャケット

 
AbbeyRoad

渡辺貞夫 Bird of Paradise)

ナベサダといえばニコニコ顔でアフリカ音楽やフュージョンを演るオジさんの印象が強い。彼のバップもボサノバもライブでは聴く機会はないが、何を演っても楽しそうだ。ただ、自分で金を払って聴くならやはりビ・バップがいい。実は、FMオンエアされている’06東京のバックが88歳のハンク・ジョーンズと気づかなかった。このアルバムは30年前のNYのスタジオ録音でハンク・ジョーンズにロン・カーターとトニー・ウイリアムズのトリオとの共演だが、彼のビ・バップはシダー・ウォルトンとのピット・インでのライブやジェフ・ワッツとのブラバスクラブでのライブも残されている。同じパーカー・アイテムを演ってもソニー・スティットのような同時代性が無いせいか伸びやかで明るい。この録音の1年程前の同メンバーでの吹き込みが“I’m Old Fashioned”で、どちらもサイドに盛り上げられ気持ちよく突っ切っていく。

渡辺貞夫 / Bird of Paradise

 
90125
 
 
(日野皓正/'Alone,Alone and Alone')

今年もライブがあったのだろうか。公会堂には滅多に行くことがないのに、日野皓正は何度か聞く機会があった。今は大御所として若手を引き連れて温厚な雰囲気だが、かつての印象はかなりクールだった。しかし、既に当時のベルリンでの実況録音盤のインタビューで、「マイルスのイミテートと言われるより、アローンを聞いてクリフォード・ブラウンと言われた方がいい」と答え、日野が追いかけていたのは帝王マイルスではなく朗らかなブラウニーだったと分かる。この時期、弟の元彦など同じメンバーで公会堂に来ていて、金属音を引きずるキャノンの一眼レフでステージを撮影して迷惑をかけてしまった。

Hino at Berlin Jazz Festival / T.Hino

AssaultAttack
 
(チャーリー・パーカー'How Deep is the Ocean')

 船乗りに憧れた坂田明がアルトサックスを持ったとき、どうしたら上手くなれるかと考えて「吸った息をいっぱいに吐き出し思い切り早く指を動かしなさい」というチャーリーパーカーの言葉の通りに演奏したそうだ。天才の言う通りに実行するところも面白いのだが、実際にパーカーの録音を聴くと音の前にシュとかプスとか聞こえるような気がする。本当にレスター・ヤングの演奏を早回しで練習したのかもしれない。

 このダイヤル盤LPは東芝から正規の輸入版が発売されていて、一枚3,500円と高価なのに同じ曲ばかりが幾つも続いて入っていてちょっとがっかりしたが、今ではこの別テイクが宝物だ。パーカーが部屋に転がり込んだという若きマイルスも聞くことができる。
Charlie Parker on Dial /C.Parker  

StickyFingers
(マイルス・デイビス/Funky Tonk)

 マイルスにはエレクトリックから入った。アコースティックの時代はレコード盤でしか知らない。プラグドニッケルを聴いたのもずっと後だった。だから、過去とのつながりも、変化も気にせずに聴くことができた。

ビチェスブリューで変身してから後のマイルスはライブが多く、西海岸・東海岸・東京・大阪と各地でコンサートを開催し、録音のほとんどが二枚組になって発売されている。何度も来日し、聴く機会は多かった。LIVEを逆に綴ったこのアルバムも、大部分がライブ録音で構成されている。 とにかく音が大きい。野外のコンサートでは一層の大音響になる。アンプを通しメンバーも多いので音が大きいのは当り前だが、これがリズムに乗ってたたみ掛けサッと引いていく。自身がブラックミュージックであることを強く意識し、ジミ・ヘンドリックスをバンドに誘ったそうで、ここではキース・ジャレットがゲストのように在籍している。その後、来日時にはピアニストがいなくなった。
LIVE EVIL / Miles Davis

Flashes
(ユタ・ヒップ/Lady Bird)

 敗戦国出身の女性ピアニストとして、日本から渡米した秋吉敏子がバド・パウエルのコピーならドイツ出身のユタ・ヒップはホレス・シルバーのソックリといわれる。外国人であり女性であることはハンディではなく、むしろプラスの要因として利用されたようだ。トークショーのような秋吉敏子のコンサートで聞いた昔話から察すると、彼女たちは自分がどんな風に見られているのか十分に承知していたのだ。

 P・インド/E・シグペンとのトリオによるヒッコリー・ハウスでのライブは、ブルーノートの2枚のアルバムに収められていて、派手に煽り過ぎないシグペンのブラシが全篇を締まった雰囲気にしている。彼女をシルバーの器用なコピーキャットと言ってしまえば終わりかもしれないが、何故かタッド・ダメロンの曲が活き活きとして聞こえるのは嬉しい。
At the Hickory House/Jutta Hipp

ZEP4
(ウェイン・ショーター/Native Dancer)

 夏になると思い出すのがこのアルバムだ。ハワイ土産のアロハシャツの絵柄と混同し、青い空と椰子の並木のジャケットに鸚鵡の絵があったと錯覚していた。この絵を見ると浜風の中で青いパンツをはいて焼ソバかカレーにビールで過したくなる。ボサノバほどではないが、音も海辺が似合う。サンバ・カンソンというそうで、熱いリズムにミルトン・ナシメントのボーカルが涼しげだ。よく似たメンバーでリーダーが入れ替わった“ナシメント”というアルバムもあって、この“ネイティブ・ダンサー”と合わせるとボリューム感が増してくる。ショーターには多くの録音があるが、彼にとって異色の二枚は私にとって夏の必須アイテムになってしまった。
Native Dancer / Wayne Shorter 

STORMBRINGER
 (ヴェルベット・アンダーグラウンド) 

“Peal slowly and see”と小さく書いてあるので、その通りにそっとバナナの皮をめくってみると中からピンクの実が出てくる。ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホールによるジャケットだ。実は、このジャケットが欲しくてLP盤を探し回った。もちろん、マリリン・モンローのシルクスクリーンよりずっと安く手に入った。LAのホックニーにNYのウォーホールと対峙されるホモセクシャルの両雄?ということでもないだろうが、“I’m Waiting For a Man”が収録されている。ヴェルヴェットはアンディに気に入られイベント出演後に彼のバックアップを受けてこのアルバムでデビューとなったが、ここではアンディの映画チェルシー・ガールに出ていたモデルのニコがボーカルで参加している。なお、このバンドの奇妙な名前はSM小説のタイトルから取られたそうだ。
the Velvet Underground & Nico

(ヴ

(浅川マキ 裏窓)

部屋でFMに流れる浅川マキのライブに気づき、行き損ねたと思った。西部講堂からゲストがゾロゾロのライブだった。小劇場、フリージャズ、暗黒舞踏、その時その場でしか巡り会えないものが西部にはあったし、寒い夜に筵の上で焼酎を舐めながら淺川マキを聞きたいと思った。その後は聞くチャンスもなく、この歌詞を書いた寺山修司はずっと前にこの世にいない。しかし、よほどこのライブが気に入ったのか、アルバムにはその場の空気と「どこも美しくなって私には住みづらいが、ここはなかなか…」という彼女の言葉が残されている。引退の噂も聞いたが、たまに新宿PIT・INNで公演しているようで、大晦日は渋谷毅p.向井滋春tb.と、いつもながらいい男達をサイドに迎えている。
ライブ夜 / 浅川マキ

PacificJazz

(坂田明/ゴースト)

ヨークのマスター奥井さんが亡くなったと聞いたのは去年だったろうか。日銀裏に引っ越してから随分と経ったが、店の雰囲気もお客さんも水道水で割ったバーボンも、年に一度も立ち寄らなくなっても、マスターも何も少しも変わっていなかった。 まだ片町牡丹堂の二階にアルティックを据付けたお店があり、たまにライブをやっていた頃のこと。遅れて入ると席がなく、山下洋輔の汗が飛び散るピアノの脇に座り込んだ。坂田明と森山威男の最強トリオ。この時期、洋輔のオリジナルもいいが、太鼓が小山翔太に替わり、演歌のように小節の効いた坂田がアルバート・アイラーの「ゴースト」をカバーしたモントルージャズフェスティバルでの録音がある。途中に「赤とんぼ」のフレーズが飛び出してくる。海外で演奏活動をして、拠り所になるのはクラシックでもブルースでもなく、子供の頃にいつも通った瀬戸内の渡しの舟歌だったという坂田の話を思い出した。
Montreux Afterglow / Y.Yamashita

                                 Vol.3に続く…