能登風景写真帳 ---1

浦島五月
(写真・文)

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(1)徳光

    • 父の故郷。砂浜の他には何もなかった海岸には、延々と
      防波堤が築かれ海中にはテトラポットが埋められている。
      墓参りを終えてから古タイヤのチューブにつかまって足
      がつるまでハマグリを採って焼いた浜には、夏休みにな
      るとサーファー達を押し退けて四輪駆動車が入り込み、
      夜遅くまでバーベキューの煙が舞う。

(2)片野

    • 白砂青松の地。海上から眺めると青い海の先に白い波と
      砂浜そして黒々とした松林が連なり海水浴場が転々とす
      る。大正期には一面の砂丘だったところに植林したとい
      う松林を越えた先にある鴨池では、秋になるとシベリア
      からの渡り鳥が羽を休める。ロシア船ナホトカから流出
      した重油はこの一帯にも大量に漂着し砂浜の下に埋めら
      れた。

(3)七尾

    • 能登の中心都市。古くからの港。横綱輪島の出身地で夏
      になるとアマチュア相撲が開催される。七尾湾に面して
      和倉温泉があり、観光客のために水中遊覧船も運行され、
      冬には海上遥か富山湾越に雪の立山が姿を顕すという。
      冬は鰤の定置網、夏の海はクラゲのお花畑だ。

(4)美川

    • 手取川河口の港町。北前船の寄港地であったせいか鯖や
      鰯だけでなく鰊の糠漬けが旨い。「となりの町には映画
      館」と歌った淺川マキの生地だが地元での人気はあまり
      芳しくない。春の祭りが近づくとスベリ漁が始まり、ボ
      ラをねらって投網を打つすぐそばの橋の下ではラッパの
      練習が聞こえてくる。