ロジャーよ、お前もか…

藤中浩樹


 

 2002年3月26日(火)、大阪厚生年金大ホールにてロジャー・ウォータースのコンサートを体験した。私はピンク・フロイドは好きなのでよく聴くが、ウォータースのソロはほとんど知らない。それでもピンク・フロイドの1/4を担っていた訳だしライブに先立ってライブ・アルバム"IN THE FLESH"が発売されたこともあり、いやがおうにも期待は膨らむ。

 さて当日のセット・リストだがおおよそアルバム"IN THE FLESH"と同じであるのでそちらを参考にされたい。2部構成で1部はピンク・フロイドの曲を、2部はソロ・アルバムを中心に演奏された。オープニング曲はアルバム"THE WALL"から正に"IN THE FLESH"。"THE WALL"の曲に続いて"ANIMALS"、"WISH YOU WERE HERE"の曲がダイジェストに演奏されて1部終了。約15分の休憩をはさんで2部のオープニングはアルバム"A SAUCERFUL OF SECRETS"から"SET THE CONTROLS FOR THE HEART OF THE SUN"。その後ソロ・アルバムからの曲が続く。アンコールもソロからだ。

 映像と共にサラウンド効果の会場は熱狂的なファンで盛り上がる。オープニングの"IN THE FLESH"から総立ちになり曲に合わせて踊り出すファンもいた。前回ウォータース抜きのピンク・フロイドが来日したのが1988年3月だったのでそれから数えても14年ぶり、ロジャー・ウォータース自身は30年ぶり(72年3月以来)である。待ちに待ったという感は否めない。私自身14年前のコンサートに行けなかったので非常に期待していたのだが・・・・・。

 ピンク・フロイドのアルバムはその時その時の社会情勢をよく反映している。"THE WALL"などは1979年だからこそ印象深いアルバムだった。しかしその曲を21世紀に持ち出し曲に合わせて踊るなんてことは残念ながら私にはできなかった。"ANOTHER BRICK IN THE WALL part 2"は当時の私の心の中に深く刻まれた曲だ。単純にいい曲だから演奏したというのであればそれでもいい。しかしそこには当時の精神性のかけらは微塵にも認められなかった。別に私はすべてのコンサートに精神性を求めているわけではない。ただ現ピンク・フロイドを(ウォータース抜きのピンク・フロイドを)擁護しているだけである。”A MOMENTARY LAPSE OF REASON”と”THE DIVISION BELL”は評論家からは非難轟々だった。ウォータースが去ってフロイドは終わったとか云々。確かに”A MOMENTARY LAPSE OF REASON”はあまり好きなアルバムとは言えないけれども”THE DIVISION BELL”は聴きやすいよいアルバムだと思う。勿論過去の名作と比べるにも及ばないが時代に適応した楽曲が揃っている。ピンク・フロイドは終わったのではなく”変わった”のである。それを受け入れるかどうかは各人の好みの問題だ。私がロジャー・ウォータースに高い精神性を求めて現実とのギャップを感じたのも単に私が勝手に期待していただけで、ウォータース自身も”変わった”のかもしれない。悪く言えばソロに転じたが商業的な成功を得られず過去の遺産を食いつぶしているのかもしれない。私の好きなイエス、ディープ・パープル、EL&P、そしてウォータース抜きのピンク・フロイドもそうだろう。近年過去の栄光と決別できないベスト盤的なコンサートがいかに多いことか。各バンドのメンバーが歳をとり新しい創造力や気力が失われてきたということなのだろうか。それでもリスナーは常に新しいものを求めている。栄光のバンドを脱退した時のような反骨精神を今一度取り戻して「おれはピンク・フロイドの曲はやらないぜ。」と言ってほしかった。コンサートの1部は単に1/4のピンク・フロイドでしかなかったから不完全燃焼だった。それに比べて2部はソロの曲を中心に演奏されたので知らない曲が多かったにもかかわらずバンドのまとまりがよかったように思う。ただよく似た雰囲気の曲が多かったが。それでもロジャー・ウォータースにはソロの曲を中心にコンサートをまとめてほしかった。

 最後に、これまた勝手に期待していたギタリストのスノーウィー・ホワイトの演奏には光るものがなかった(疲れていたのだろうか)。しかしながら他のサポート・メンバーがとてもすばらしい演奏や歌声を聴かせてくれたことに感謝してこの稿を終わることにする。

SCOPE 藤中浩樹

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