Nirvana/
FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH

1.Intro 2.School 3.Drain You 4.Aneurysm 5.Smells Like Teen Spirit 6.Been A Son 7.Lithium 8.Sliver 9.Spank Thru 10.Scentless Apprentice 11.Heart-Shaped Box 12.Milk It 13.Negative Creep 14.Polly 15.Breed 16.Tourette's 17.Blew

Kurt Cobain(Guitar,Vocals),Dave Grohl(Drums,Background Vocals),Chris Novoselic(Bass),Pat Smear(Guitar,Background Vocals)on track 8,10,11,12,Chad Channing(Drums)on track 14,15

 Nirvanaについては、“NEVERMIND”を人から薦められて聴いたとき、こんなすごいバンドの存在を知らずにいた自分に腹が立ち、冷静に聴けなかったらしく(冷静に聴く類の音楽ではないけど)、こちらのライヴ盤を聴いて、やっと彼らの持ち味を楽しむことができた。個人的理由により90年前半頃の音楽シーンについては何一つ知らないので、当然グランジというジャンルについても知識はなし。遅まきながら、Kurt Cobainの自殺のニュースなど、当時のファンの受けた衝撃についても知った。興味は深まったが、この歳でいまさらNirvanaなんてねえと思っていた頃、レンタル店の中古品棚にこのアルバムを見つけた。

 聴いてみて、自分がばかげた常識に流されていたと気づく。自分の嗜好すら分からないほどボケたかと、また反省。当時のリスナーやミュージシャンにNirvanaの与えた影響がどれほど大きかったか、実感した。初期のライヴは、テンポが微妙に合ってないなど、多少の演奏ミスはあるものの、自分の生き様をダイレクトに伝えたいという切迫感(これがないロックバンドの存在意味はない)に満ちている。あふれ出す轟音、オルタナの流れを汲むメランコリックな曲調、中産階級的こぎれいさを徹底排除した姿勢に共感を覚える。似た雰囲気の曲が多いが、絶妙の「壊れ方」の魅力に引き込まれる。初期の作品もいいが、93年録音のHeart-Shaped Boxのヴォーカルが聞かせどころ。ノイズ満載の曲はなく、予想以上にまとまったアルバム。ライヴなのだから、“NEVERMIND”での完璧さを求めることもないだろう。

 90年代のロックの「手本」となるに相応しい彼らの登場に、どれほどのリスナーとプレイヤーが熱狂し、彼らを支持したか、彼らのスタイルがどれほどコピーされたかを、数年遅れて理解することになった。彼らの音は確かに新鮮だが、かつてのフーの演奏、さらにどういうわけか、シド・バレットの曲を思い出さないでもない。先行するロックンロール史の反復もあるが、その流れに漂うことを拒絶する姿勢も明確だ。
 
 このバンドが成功と引き換えに負った重荷は、ただならぬものであったらしいが、とにかくKurt Cobainが死んでしまって、この上なくスリリングなロックンロールを聴かせてくれたバンドも消えた。リアルタイムでこれを体験したファンの喪失感は想像を絶するが、一方自分は、20年以上も多少なりとロックを聴いてきたのに、この事件を知らずにいたわけで、その惨めな空白はどうにも埋まらないまま、今もこのCDを聴いている。

(岡崎凛・2002年7月)

Siouxsie & the Banshees/
KALEIDOSCOPE

1.Happy House 2.Tenant 3.Trophy 4.Hybrid 5.Clockface 6.Lunar Came l7.Christine 8.Desert Kisses 9.Red Light 10.Paradise Place 11.Skin

Budgie(Bass,Drums,Harmonica,Vocals),Steve Jones(Guitar)John McGeoch Ellaphone,Guitar,12 String Guitar,Organ,Saxophone,Sitar,Synthesizer),Severin(Bass,Electric Guitar,Piano,Rhythm Box,Sitar,Synthesizer,Vocals),Siouxsie Sioux(Droma,Finger Cymbals,Acoustic Guitar,Rhythm Guitar,Melodica,Sound Effects,Vocals),The Sirens(Vocals,Background Vocals)

 このアルバムが出た1980年頃は、まだオルタナとかニューウェーヴという言葉は浸透していなかったと思うが、正直言って覚えていない。心の傷の痛みをダイレクトに伝える女性ヴォーカル、それを盛り上げる構成的なリズム・ギターに圧倒された。

 極めて頽廃的なムードが漂う一方で、Siouxsie Sioux(スージー・スー)が呈示するのは、人間の極めて醜い部分から目をそらさぬ姿勢だ。安易な逃げは一切ない。この姿勢がアルバム全曲を貫く。

 曲調は全般に暗く重いが(ときにホラーハウス音楽風)、この独特の雰囲気に惹きつけられる者は多い。効果的な不協和音が聴く者の心の歪みをとらえ、奇妙なカタルシスを与える。極限状態に甘美な一瞬が見え隠れする。

 特筆すべきはやはりJohn McGeoch だろう。助っ人ギタリストとして加入した彼はその後の二枚のアルバムにも参加している。このギタリストの場合、弾き方というより、外れ方が最高。ギターもサックスも、絶妙のタイミングで絶望の底を低空飛行する。

 彼の脱退後に参加したCureのRobert Smithも元々Bansheesの助っ人だったが、この大物二人が意外にやる気のあるミュージシャンだったとは、当時は全く気づかなかった。

 このアルバムはSiouxsie and the Bansheesの代表作だが、これが彼らのベストかどうかはファンの間で諸説あるだろうと思う。名曲Happy House、Christineは、アルバム“Once Upon A Time-Singles”などにも収録されているので、このアルバムのムードがあまりに暗いというのであれば、そちらのほうがいいかもしれない。しかし"Kaleidoscope"では、思春期的不機嫌さ、不安感、神経症的な心痛が表現されていることに着目したい。そうした精神の乱高下にぴったり合うギターを、John McGeochが弾いている。

 2002年8月にSiouxsie and the Bansheesの来日が予定されている(Summer Sonic Osaka)が、1ヵ月前の今もメンバーが発表されていない。昨年のフジロックではPattySmithが好評だったそうだが、彼らの場合、昔のファンがロックフェスに足を運ぶのだろうか?
 約20年前の来日公演とは時代が違いすぎるので、まるっきり予想がつかない。

追記:
けっきょく大阪でのSummer Sonic 2002を聴きに行くことはできなかったが、8月18日の東京(幕張)のステージを聴きに行った、志穂美さんという方から、感想をもらった。興奮気味の彼女の様子から察するに、私は的外れな心配をしていたらしい。
「スージーの姿勢は何一つ変わっていなかった。しかも、物凄く力強く進化していました」とのこと。相変わらずスタイリッシュなSouxsieのステージ姿と、迫力ある演奏を堪能したようで、羨ましく思った。

(岡崎凛・2002年7月/9月)


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