グチダラ制度徘徊

【5】

 
 

 郵政民営化の是非にからんで衆議院が解散ということになった。賛否の真意がどの辺りにあるのか、さほど深い関心を持っているわけではない。鉄道や電話など先に民営化された例を詳しく検証しているわけでもない。ただ、身近なこととして、民営化された時に何が変わるのか想いを巡らすことは難しくない。

 実は、数年前のこと、母が郵便局に定期貯金をしたところ数十万円が消えるという事件があった。今でも、あのお金の半分でもあったらなあとこぼしてしまう。郵便局員による横領などの犯罪ではなく、郵便局員が注意義務を負うべき過失もなく、証拠書類は全て整っており裁判で争っても無駄だとして母に全ての責任が負わされたのだが、相手が見知らぬ銀行員なら母ももう少し警戒したのではないかと思う出来事であり、また、当然の事ながら郵便局は役所であり郵便局員は役人であることを改めて認識した出来事でもあった。

 話を簡単にすると、郵便局員が自宅に来て貯金を勧め、老人扱いで非課税にすると言って十万円余りを預かって行ったのだが、半年ほど後になって10年ほど前からの貯金が満期になった際に課税扱とされ、証書の額面を割ることが判明した。これに気づいた郵便局長が「ちゃんとする」と言って全ての証書を預かって行ったのだが、返された時には非課税の文字が消されてしまっていた。担当局員からは一切の説明もなく、判を押したのは本人の責任で、「個人的には分かる」が上からは「訂正を認めない」との指示が出され、それは自分達ではなく「国税からの指示による」として誰も皆が関知しないことで一致した。郵政当局にとって「ちゃんとする」とは、本人のためではなく、組織を守り局員のの責任を回避することと理解した。

 「老人マル優」という制度自体が納得できない。医療費控除なども同じだが、ニュートラルであるべき税制で特定の事由を扶助する考え方そのものに異議を申し立てたい。しかも、その限度額の管理や税額の徴収をを郵便局のシステムに負わせているのは、企業に従業員から所得税を源泉徴収するだけでなく年末調整までさせる手法に通ずるようだ。定率の源泉控除に留まるなら事務負担はたかが知れているが、それ以上の管理を要求すると様々のプライバシーに関する資料を申告する必要も多くなるし、管理する側にとっては本人に対しては何の責任も権限もないのに「義務」ばかりが多くなる。結局は他人の「自己責任」の名目で誰にとっても無責任な領域が拡大されている。

 さて、郵政民営化と聞いて単純に考えるのは、年金制度の面からは旧国鉄共済と同じように厚生年金に加入するのかと思うのだがどうなのだろうか。こんなところで特例を作っては民営化なんて何の面白味もない。考えようによっては、民営化されなくても厚生年金に統一してもいい。役人の立場からは、民間と同じ年金制度に加入するなど不利益と判断するだろうが、役人も民間人も労務を提供し賃金を受給するレベルの者にとって差別を設ける事の方がおかしい。単純に労務提供レベルの役人なら労働争議も認めるのが当然だし、役人としての身分保証でなく一般労働者としての身分保証で充分と考える。権力行使に関るレベルの者は、2〜5年程度の任期で選挙なり忌避なりによって任免を繰り返す考え方も成り立つが、その間の身分保証は権力行使を裏打ちするものとなるべきだろう。では、年金も何か特別な制度が必要なのだろうか。民間の会社の役員が厚生年金に加入していることに大きな問題がないなら、権力行使役人が厚生年金に加入することに問題があるとは考えられない。だとすれば、民営化と関係なく全ての公務員が厚生年金に加入し、公的年金制度を基礎年金と上乗せとしての厚生年金とに統一することは直ちに可能と考えるべきではないか。

 次に、郵政民営化で気になっているのは、退職金は支給されるのだろうかということだ。事業を承継するにあたり、その職員も退職金債務も承継するなら退職金は繰り延べられてより高額化して支給されることになる。精算するのなら、全員に一時に大量の額が支給されることになる。この退職金、役人の退職金が高額なこと自体も民間企業との異様な格差と言うべきだが、退職金に対する課税や保険料の賦課が殆ど無いといっていいほど少ない。税金が掛からないのは宝くじと同じ理屈かと無理に自分を納得させている。中小・零細な企業なら何十年も同じ所に勤め続けるなど普通ではあり得ないし、就職した小さな会社が何十年も後まで解散も合併もしないで存続していることさえもが宝くじ的なのだから。偶然に退職金を受け取っても課税しないということだと。でも、これは零細企業のことで、役人のこととなると退職金が支給されるのは必然とも言うべきで、これが殆ど非課税とされるのは役人のための制度としか考えられない。国民年金よりも厚生年金よりも遥かに高額の年金を支給されながら、これも民間よりも遥かに高い水準の退職金も支給されて、しかも課税が有るか無いかというところが上手く出来た仕掛けだ。何千万円も控除して更に残りの半分に課税などとややこしいことは止めて、控除など要らないから、半分の線を生かすなら半分の税額を倍するという二分二乗くらいのやり方できちんと課税する方が納得できる。郵政民営化の前にこんな税制改正をやったら面白い。

 ついでに、退職金から厚生年金保険料を頂くこともいいのではないか。公的年金制度を「世代間の助け合い」と説明されることがある。今の年金受給世代が現役時代は年功序列で私達の上司ポストをキープしてきた世代で、それを引退後も更に貢いで支え続けろという事にしか考えられない。世代内でも助け合うのはいかがだろうか。宝くじに当たったような、たまたま退職時に会社が存在したので受け取る事が出来る退職金なのだから、皆で分け合っても悪くないだろう。事業主負担を無くして保険料率の全てを本人負担とし、役人も民間も全て退職金から基礎年金・厚生年金に拠出するのが、多様な人生のなかでは公平とも思える。退職金から控除した保険料を給付に反映するのは難しいかもしれない。高額の退職金を受給するような人達は配偶者が専業主婦として第三号被保険者になっているだろうから、退職金からの保険料が基礎年金の原資にまわると思えば直接的に給付とリンクさせることもないとも考えられる。

 ここまでくると、郵政とも民営化とも何の関係も無いが、公務員研修の有料公開ということを考えている。役所の研修のことは何も知らないので、勘違いをしているかも知れないのだが、研修期間は有給で受講は無料になっているのではないだろうか。業務命令として受講するのでなければ、民間企業では、外部のセミナーを受講する場合などは有給休暇を取得して受講料は自己負担するのが一般的だろう。これにならって、公務員研修は全て外部に公開するものとし、有料で受講を認めることをやってはどうかと考えている。公開それ自体よりも、役所のフリンジベネフィットを有税化できるところが役人いじめと言われそうだ。役人の居心地良さを金銭評価するなら、実際には研修に課税するよりも宿舎や寮を有税化する方がもっといいかも知れない。

 最後に役所の求人について、一般企業が職安で求人票を掲載しようとすると年齢条件を付することが認められないのに、役所の採用試験ではいまも学歴や年齢制限が公然と行われている。民間企業では法律により65歳定年制が具体的に実施されようとしている時期でもあり、役人が定年近くに民間に天下りするルートだけでなく、民間を中高齢リストラされてしばらく役所で勤めるようなパターンがあってもいいだろう。そのときは、人件費総予算を人数割する感じでワークシェアリングすることになる。むしろ、中高齢者を大量採用して各部門を民営化することも可能と考える。また、行政書士や税理士など役所のOBの老後の生活保障としてではなく、有資格者を役人ポストに組み込むこともあっていい。中高年齢者のための公務員試験予備校ができたり、公務員給与の大幅引下げが実施されたり、公務員の労働市場に流動性が高まることも大切なことだろう。議員も役人も弁護士も教員も二世三世がゾロゾロと続くのはとにかく気持が悪い。

 
 
2005.8.16

浦島五月