グチダラ制度徘徊

【7】公務員制度

 
 

 の周囲を見まわしてみると、いつのまにか公務員になってしまった人達が少なからずいます。私達の年代にとって、公務員というのは決していい「就職先」とは思っていなかったのですが、民間企業から官公庁に転職した人達がいるのです。もちろん、キャリア官僚ではありません。教職であったり郵政であったりで、役所勤めとは違うのですが、公務員であることに違いはありません。在学中に公務員試験を受けた人達もいることは確かなのですが、私の普段の付き合いには縁遠い人達です。その分、仕事上の関りで出先官庁の窓口職員に新鮮な驚きを感じることがあります。

 ですから、公務員制度を考える、と言ってもキャリア官僚をイメージしているわけではありません。官僚制に関する研究は非常に興味あるところですが、論点は下級官僚あるいは木端役人というあたりに置きます。民間企業の従業員と変わらないレベルの公務員を対象にしか考えが及ばないからです。

 「就職先」として公務員に人気が無かったのは遥か昔のことのようです。理由は単純で、給料が安かったからです。旧い時代の田舎の公務員は、名家の跡取の名誉職のようでもあり、貧乏な秀才の受け皿のようでもあり、憧れとは程遠いものでした。家業を継ぐ前の若い時期に人脈を築くことは給料を辞退してでも必要なことだったでしょうし、研修所や職員寮の存在は進学して学費や下宿代を支払うことからすると、貰う給料は僅かであっても累積して大きな差が生じてきます。もっとも、役所の臨時職員などは公務員とは言えませんが、今も女性のアルバイト先として世間体は悪くないので親が薦めることが多いようです。また、自衛官などは元々が高齢になるまで勤めることは少ないのでしょうが、在任中に各種の資格を公費で取得して退官後に事業を始めたという話もあります。

 今では、大企業並の給料と賞与(一時金?)、大企業を上回るほどの退職金、更には民間と別枠の共済年金、それだけではなく勤務の時間や日数などを考えると、労働条件に限っても総合的に見て民間の小規模企業の数倍を超す程のレベルのようです。身分保証や教育訓練制度・福利厚生制度・退職後の勤務まで考えると、就職先として公務員を第一に志望する人達が沢山いることは当然のことです。

 役所に就職するにはどうするのか、というと少し品が悪いので、公務員になるにはどうするのかと考えると、「公務員試験」を受験することになります。受験講座まで設けられていることからして、かなり難しい試験だと思います。でも、受験の前に、年齢条件があります。民間企業が職安で求人しようとすると性・年齢に条件を付けることが認められませんが、公務員の「求人」はもちろん民間とは違うという考えのようです。このあたり、入り口の部分から少し考えてみます。上級職公務員はそれなりの志望を持って公務員試験を受験するのだと思いますが、もっと下のランクでは高校を卒業して「進路」指導の選択肢として公務員を目指す人も多いことと思われます。一般職では少ないかもしれませんが、警察官や税務署員などは進路指導の先生からの推薦は重要だと考えます。世間一般からはあまり好まれる職業ではありませんが、それなりの生徒をうまく受験する気にさせています。実際のところ、試験に合格する程度のレベルも必要です。

 不思議なのは臨時職員です。役所によってはかなりの数を占めていて、普段、何気なく接している窓口職員の殆どが臨時職員ということもあります。その名の通り、かつてはいわゆる腰掛という程度で短期の勤務が多く、職務内容も補助業務が中心だったようです。採用ルートもコネで足りていたようです。このごろは、コネがあっても職安に求人票をだして職安紹介状のある人を対象にする役所も多くなっています。職務も補助であることに変わりありませんが、お茶組み的な役割ではなく定型的な判断業務が多いようです。ただ、長期の継続勤務には不都合が起こるらしく、数年の勤務を限界にして他の職場を紹介することが行われています。求人が不定期で採用人数もその都度で少数であるため、アルバイト感覚で働く人が多いものの、十年以上に亘って幾つもの職場を数年毎に渡り歩くような就業スタイルの人もいて、独身女性の嫁入り前の腰掛という感覚だけではなくなりつつあります。いづれにしても、採用時における公平性という建前は崩せないようです。

 募集・採用にあたって気にかかるのが年齢制限です。年齢制限が緩いのは周辺部の特殊な職種のみと見ていいでしょう。大企業が新卒だけを対象に求人するよりはまだましだともいえますが、それ自体に疑問があります。公務員の採用年齢に制限を設けず、できれば全ての公務員を3年から5年ほどの有期雇用とし、常に外部労働市場に対して開放的な職場とすることに不都合はあるのでしょうか。少なくとも、まともな研修さえ受けないままでも臨時職員たちはそれなりに自己の職責を果たしているのです。役所に就職すれば老後も含めて一生が安泰です。この職場を周辺に開放できれば、二倍三倍の人達の人生が安泰となるのかもしれません。倒産した不動産会社に勤務していた40歳代営業マンや、民間保育所をリストラされた30歳代保育士や、金融機関を早期退職した50歳代管理職など、役所で仕事するのに何か不都合があるでしょうか。民間のセンスを持った人が役所に増えると談合も増えるのでしょうか。

 役所が必要な職員を採用し配置すると、次に必要になるのは期待レベルまでの教育訓練です。そして、民間企業ならこの訓練された能力と職務に対応した賃金の支払と、その成果を測定し評価することも必要ですし再配置・再教育も行われなくてはなりません。教育訓練について考えます。この先の全ては想像といってよく、教育現場を見学したことすらなく、勝手に羨ましく思っている部分が沢山あります。しかし、個人事業者が自分自身に対するインプットのための時間と費用を捻出しようとするととんでもないことになることからすると、個々の公務員にとっては大きな利益を得ていると考えることに間違いはないと思います。普段から接することの多い役所の職員が実に勉強熱心なだけにそう思うのです。それぞれの役所に関連して、何々研修所や何々大学校というのが設置されていて、そのような施設で長期間の研修を受けてくることが多いそうです。企業の研修所とは趣を異にしているようです。

 業務連絡は別として、役所の人間だけしか聞いてはいけない研修など、行われるべきではありません。研修施設での研修は全て有料化して一般に開放し、公務員も含めて全受講者が有料で受講してもそれなりの価値はあるのではないでしょうか。3年から5年ほどの契約期間の区切りを機にこのような場所で研修を受けたり、民間からの新規採用希望者に対しては雇用保険制度から受講を支援したり、税務など民間企業との接点が多いものは大学などの講座として民間をメインに開講したり、有料とすることに魅力を出すことも可能と考えます。公務員であっても有料実施し本人が全額負担すべきでしょうが、本人負担に不都合があるなら旅費・宿泊費も含めて現物給与として課税して可能な範囲で経費として控除すれば足りるでしょう。社会保険料なども算定対象とするのが自然です。研修自体を業務と看なすか否かについて、色々な問題が出るかもしれませんが、一般の参加が認められるようなら業務とすることもないでしょうし、給料を支払う必要もないと考えます。もちろん、有給休暇として取り扱うことに問題はないと考えます。

 航空機の操縦や医師免許などは特殊としても、自衛官などでは、在任中に調理・整備や運転免許など民間で通用する資格を取得することが必要な事が多いようです。国税庁や税務署でも税理士資格(試験免除の特権?)が与えられるようです。これらも有料化することが公平な感じがします。税理士資格など受験予備校に通学したり大学院に入学して免除資格を取得したりすることを考えると、かなりの高額な評価がされそうです。また、公立病院の看護士などでは当然なのかもしれませんが、一定の資格所持者を年齢にかかわらず採用するなど、もっと自然に行われても構わないように考えます。看護士などは年齢制限がどのくらいなのか知りませんが、税務職員や教職員など年齢制限をする理由に乏しい職域は多いことでしょうし、国籍の制限に関しては更に制限する理由のない職域が多くなることと思います。官民の交流として考えるなら天下りが全面的に無価値とはしませんが、言葉通りに一方的に篩い分けられた者を送りこむシステムとして作動するなら、民間会社だと子会社に高賃金の出向者を圧し付けて資金を吸収して支配を強化するのと変わりません。

 どこで区切をつけるのが妥当かは分かりませんが、公務員でも本来の公権力に直接に或いは大きく関わる職務は僅かであって、臨時職員・アルバイト職員に対応させているものから民間と同じことをしているものまで、役所の仕事ではあっても「公務」でなくてもいいような仕事が多いのではないかというのが話の始まりでした。秘密厳守はどこもコンプライアンスとして求められることですし、身分保証は雇用契約上の保護で充分ですし、労使交渉も労働組合を通じて行えばいいことです。数年前から市町村の合併が行われていましたが、このとき、当然のように職員の身分は継続されていることと思いますが、全職員に退職金を支払い新たに必要な人を採用するということをどうしてしないのか、そんなことから気になってしまいます。

 
 
2007.3.14

浦島五月

to be continued