年金について考える - 1 -

<非公開「断愚流通信」メンバー間メーリングリストより>

浦島五月
解 竜馬

 
波乱があったようななかったような参議院選挙が終わり、少なからずタイミングはズレてしまいましたが、「改憲」問題と同様、もう少しは時間をかけて、じっくり、きちんと考えていかなければならない問題=課題であると思います。(天木)

紛糾する国民年金問題…
解龍馬氏が取り上げた日刊ゲンダイの二木啓孝と経済評論家の紺谷典子の年金に関するコメントを叩き台に、浦島五月が分析を展開。

いい加減にしろ、国民年金法案の改正!(from 解龍馬)

無用の危機意識の捏造…年金危機を叫ぶ前に考えるべきこと

 

年金の財政状態の危機は政府とマスコミのでっちあげだ。以下に日刊ゲンダイの二木啓孝と経済評論家の紺谷典子の言い分を引用させてもらう。

紺谷

霞ヶ関情報を信じて今のような流用をこのまま続けていったら、パンクすると思う。しかし、きちんと立て直して本物の改革をすれば、保険料率など上げなくてもちゃんと上手くいくはず。
今、積立金は147兆円だと政府は言っているが、実際にはあと80兆円あるのを隠している。公的年金には厚生年金・国民年金・共済年金の3つがあり、積立金は、国民年金の10兆円と厚生年金の137兆円だとしている。しかし、先ず共済年金の積立金50兆円をすっぽり落としている。そして厚生年金には、137兆円のほかに代行といって企業に預けている分があり(今、それの返上が始まっている)、それが30兆円ある。政府は一方、給付は40兆円もあると言っている。そこには共済年金の分も含めている。要するに整合性のとれないデータを出して、実際以上に「危機だ、危機だ!」と騒いで、保険料の値上げと給付の引き下げを納得させようとしている。

もっとも、これは隠している内にも入らなくて、調べればすぐにわかる事をマスコミが調べていないだけのことだと思う。高齢化社会になった時のために高すぎる保険料を取ってきたからこそ、積立金が現在あるのであって、黒字なのだ。ところが、今度の改革ではその積立金を使わないことにしている。いつ使うのかというと、逆ピラミッドの高齢化社会ではなく、既に本来、ピラミッド型に戻っているであろう2050年になってから使い始める予定である。それは今から百年後の2100年になっても、まだ百数十兆円もの積立金が残るような使い方なのである。

岩瀬達哉さんという年金問題を5年も追いかけてきている人が「年金の悲劇(老後の安心はなぜ消えたか)」という本の中で面白い話を紹介している。
フランスやドイツが、日本の積立金というのは高齢化対策として素晴らしい制度だと思って、視察に来た。そうしたら、「なんの事はない。単に厚生官僚の利権の巣になっているだけじゃないか!」と呆れ、フランスの首相の諮問委員会では、「日本の年金の積立の真似だけはしてはいけない」ということになり、ドイツでは、「日本の積立金のことを知るにつけ、我々は何をしてはいけないかを学んだ」と言っている。
つまり積立金は、高齢化社会に備えてずーっと取り過ぎてきた掛け金であるにもかかわらず、それをずーっと温存して、自分たち(政治家・官庁)が勝手に使えるお金としようということである。グリーンピアに関しては騒がれているが、あれは4000億円たらずで、他にもう10兆円くらい無駄使いしてしまっている。例えば、公用車や、社会保険のデータがどこでも繋げられるようにと導入した全国ネットのオンラインなど。本来なら社会保険庁の経費なので全額税金で出すことになっているが、積立金から出している。こういう事をさせているのは、実は財務省である。財務省が自分たちの財政支出をしぼるために、「いいよ、やっても」と言っている。

 

二木

この社会保険庁のデータシステムというのは、めちゃくちゃ古い信じられないような物で、莫大な経費を使って入れている。NTTデータシステムと他2社くらいから買ったものである。自民党の若手の平井氏・渡辺氏が「何でこんなに古い物を使っているんだ」と責めたが、ほとんどニュースにならなかった。

紺谷

1998年の財特法で積立金から流用しても良いということにした。その時の大蔵大臣は、橋本総理の時だったので三塚さん。また、1998年以前にも同じような事が行われていた。厚生年金保険法とか国民年金法というもので、政府や加入者や受給者の福祉増進のために必要な施設をつくることができるという条文があるが、この必要な施設というのを、ものすごく拡大解釈して使っている。これだって一般会計と関係のあることだから厚労省が勝手にやることはできないわけで、大蔵省がお墨付きを与えているということ。この流用した4000億円だの10兆円だのは単なる使った額の累積であり、これを流用せずに運用していたら10年で2倍にもなったかもしれない。保険料など払わなくて済むような状態になっていたかもしれない。

以上引用。
(<http://eritokyo.jp/independent/nagano-pref/aoyama-col123.html>"Alternative Media "2004年5月より)

補足として、年金未納者が4割とかなんだか言っているが、これは、どうも、払い込み機関を社会保険庁に変えてから急増したとも言われている。

(from 解龍馬)

上記コメントへの返答(from 浦島五月)

 明かに何らかの意図を持って、というよりも、明確な目的の下に無用の危機意識を作り上げようとしているようです。昨年の賞与健康保険料引き上げも、介護保険の創設も、毎月の健康保険料はもっと引き下げの方向にうごくべきなのに、マスコミは沈黙のままでした。何処を目指しているのか定かではないものの、「社会保険」を社会保障と同列において、年金や健保は自分の権利・自分の金でないかのような錯覚に陥ることのないよう注意すべきです。当局からするなら、一旦徴収した保険料に自己の財産として権利を主張され拘束されるよりるより、自由に裁量で福祉恩恵としてばらまきたいだろうということを心得るべきです。或いは、「保険」を前面に出しすぎると民営化に傾くことを怖れているのでしょうか。

 社会保険事務所で年金に携わっている人の話でも、細かな数字は忘れてしまいましたが、同様の事を聞かされました。危機を前面に押し出している厚生年金は、かつて、国鉄共済を救済しています。どう言うわけか、共済年金ではなく中小零細企業の従業員が加入している厚生年金が共済年金の支払を引きうけたと記憶しているのです。既に、厚生年金危機プログラムが組み込まれていたとしか考えられない。それと、詳しくは調べたこともないが、厚生年金の財政は当初は積立方式を採用していたようだが、中途で賦課方式に切り替えたということで、このあたりにも危機プログラムの一端を見るような気がします。

 個人的な想いで言うと、年金制度を現実のものとするためと今までの社会を支えてきたことを考えると、明治・大正生まれの人は保険料より年金額が多くて割がいいのはやむを得ないことと受けとめています。
 ちょっと考えるべきは、40年前なら10年ほど支給すれば平均寿命だったのが、今は多分、20年受給している人でも平均寿命に達していないことです。多少は高めの保険料であっても、これでは、いつまでも制度を維持できるとは考えられません。年金数理の専門家やマスメディアの危機意識醸成プログラムが考えて欲しいのは、既に年金制度は40年を経て成熟というか一回転した時期で、積立金が底を突くまでに如何に資金を運用できるのか、或いは、年金財政が一時的にでも借入金を生じた時に制度は維持可能かということです。積立金に過大な運用益(資金を堂々と経費化していることや収益を無視した施設設置がなされていることからして運用益は予算化されていないのか?)を期待しているのでなければ危機はなくなります。

 どこまで本当かは知りませんが、ドイツでは税として徴収しようとすると節税意識が働くそうですが、社会保険料といって徴収しようとすると喜んで支払うそうです。さすがに、社会保険制度を考え出した国だけあって頑固と言うべきかそれとも先進的というべきでしょうか。そんな国では社会保険料を食い物にする発想はないだろうことは容易に理解できます。
 グリーンピアも年金資産の運用の一環として利回りを確保できればいいわけで、下回った時の責任が明確であれば補填も不可能ではないように想います。

 年金危機プログラムの仕掛人は財務省だったんですか。社会保険庁が年金財政を破壊し財務省が再生させる。保険料徴収システムと年金番号管理はそのまま残す。保険料は税方式として徴収する。社会保険としての権利意識を薄めて、当局の裁量による生活保護的恩恵的福祉年金として賜る。…ということなんでしょうか。これだと、年金民営化は難しそうです。

>二木:この社会保険庁のデータシステムというのは、めちゃくちゃ古い信じられないような物で、莫大な経費を使って入れている。NTTデータシステムと他2社くらいから買ったものである。自民党の若手の平井氏・渡辺氏が「何でこんなに古い物を使っているんだ」と責めたが、ほとんどニュースにならなかった。

 これは知りませんでした。

 私の周りできちんと国民年金の保険料を支払っている人が僅かながらいます。その多くは収入が極めて少ない人達です。自分の収入だけでは生活できないが年寄りが年金の中から生活費を入れてくれる、自分も仕事ができなくなったらそれだけが頼りだということです。ある程度の収入がある人は、僅かの年金など何の役にも立たん、と言って支払いません。

 これは国民年金保険料の未納者のことと思いますが、小規模法人の社会保険適用もかなり放置されているようです。法的には規模の大小を問わず全ての法人は社会保険が適用されることにななっていますが、申請を待って適用するとのことで、特段の罰則を課せられることもなく未適用のままになっています。
 ついでに、小泉首相の厚生年金について、これは少なくとも今なら違法行為です。詐欺と言われても仕方ありません。社会保険(厚生年金)は常勤者が加入することになっていて、勤務時間が一般の人の4分の3未満の非常勤者やパートタイマーは加入できません。いくら高額の給料を受け取っていても実際に勤務していなければ加入できません。勤務実体がないのに、自分の奥さんを年金に加入させるため名目だけ従業員として手続をして処罰された例があります。税務上も、勤務の実体がないのに給料だけ支払って、これを経費としていたりすると問題がありそうです。…時効でしょうが。

(from 浦島五月)

補足事項:

宇佐美保氏はそのホームページに、「年金ジャーナリスト岩瀬達哉氏の大罪」と題して、岩瀬氏の年金黒字説に反対する意見を書いています。
ここにも興味深い分析があります。

<http://members.jcom.home.ne.jp/u33/index.htm>


年金について考える - 2 -

年金制度の現状(from 浦島五月)

年金と税金の関係について & etc.

公的年金と民間の年金保険…類似点と相違点

 実は、公的年金には制度面でのメリットが沢山あります。民間の年金保険(いわゆる個人年金)の勧誘を受けて比較してみて改めて納得しました。年金を個人の損得で比較するのはマスメディアが積極的に問題とするところではないので、少し考えてみるのも悪くないと思います。特に、「社会保険」という領域、福祉でもなく民営でもなく、税制や経済政策とも距離を置いた、公的機関において運用され加入を強制される保険名義の制度としての「社会保険」の年金領域です。医療保険のように医師会などという直接的な利益団体が存在しないため、本来なら年金数理によって組み立てられるため基本的にシンプルであっていいような領域です。簡単に考えれば、負担と運用とリスクの問題なのです。

国民年金の保険料の課税控除

  まず、国民年金の保険料負担ですが、金額の大小は別として、支払った保険料は所得税・住民税の課税計算にあたって全て社会保険料控除として課税対象から控除されます。年間16万円の国民年金の保険料を支払ったとして税率が20%なら3.2万円引きの実質12.8万円で済んでいるということです。民間の個人年金だと最大限度5万円控除、同率なら1万円引きです。見方によっては、ここで税が使われていることになります。所得が高額で、税率が高ければそれに応じて年金に対応する税額はもっと引き下げられます。低所得で課税されない人にとって税制上のメリットは全く生じません。

高所得者の保険料負担は大きい?
   −−−保険料の上限と課税システム

 厚生年金の保険料負担も同様になりますが、保険料が高い分だけ控除額は大きくなります。厚生年金で特徴的なのは事業主が本人と同額の保険料を負担することです。年間40万円の保険料を支払った人にとって、税率20%なら8万円引きで32万円が実質負担です。ただ、事業主負担分は本人には課税されません。本来なら、本人の収入に40万円を加算してから税額計算の際に控除すべきところ、この事業主負担分は初めから全く所得に含めないと言うことです。確定拠出年金なども同様の取扱のようです。個人年金の保険料を会社が負担したなら、それは全て本人の収入として加算されますし、控除されるのは5万円限度であることは当然です。
 保険料負担を考えるときに問題なのは、収入・所得に対する逆累進性です。保険料が定額の国民年金では明瞭ですし、保険料が収入に比例しているように見える厚生年金でも、保険料の上限が設定されていることによって、実質的に逆累進構造ができあがっています。具体的には、年収120万円から700万円ほどの間は比例構造で収入額に応じて保険料は増加しますが、その上は上限として保険料は一定額に固定されるため収入が多くなるほど保険料負担率は下がり続ける結果になります。
 もう一つの問題として、これは公的年金制度ではなく税制によるものですが、税の控除は当然に高額所得者ほど控除額が大きくなるということです。同額の保険料負担をしたなら税率の高い人ほど税の控除額は多くなってしまいます。そして、上限と税制とが相乗的に機能することでこの累進構造は更に拡大され、高額所得者(年収700万円以上)には効果的に働くため、マスコミが騒ぐほどその実質的な負担は大きくなっていないかもしれません。

保険料支払を免除されるのは誰?

 保険料について、国民年金だけですが、低所得者に対する免除という制度も負担と同時に併せて考えるべきこととおもいます。実は、この保険料の免除について詳しく分からない部分もありますが、民間の年金保険だと長期間保険料払込がなければ解約に持ち込まれることが多いのではないでしょうか。解約して現金化するのではなく、一時的に支払を免除してでも継続して加入させることで、支給を減額され、資金を拘束され、不自由ではあっても長期の安全をキープしていると受けとめるべきでしょう。
 保険料負担なしに給付が為されるのは保険数理上は不合理ですが、社会保険の中に社会保障の要求が組み込まれた感があります。もう一つ、ご存知の第三号被保険者(配偶者)の保険料免除も見逃せません。配偶者が会社員・公務員であって扶養の認定を受けることができれば保険料を負担する必要がなくなります。年金受給に際しては保険料を納付した人と同様に扱われるため、年間15万円ほどの助成金収入があったと同じことになります。

保険給付(リスク)について

 保険料負担はこのくらいにして、保険給付(リスク)については死亡と老齢と障害とが対象です。死亡と老齢は避け難い事故ですが、障害は介護の領域で扱えないかと私なりに考えることがあります。基本的に給付は老齢によるものとして、死亡(遺族年金)が絡むため、いわゆる損得計算が分かりにくくなります。余計なことですが、女は男より平均寿命が長いことは統計的に明白で、保険料が同じだと老齢年金は女が得します。ただ、夫の遺族年金を受けて自分の年金を棄てると、制度的には夫のリスクを被ったとみるべきです。

受け取った年金は所得として課税対象に

 確定拠出年金の仕組をみると、年金に対する課税の考え方は、課税時期の繰り延べが基本です。単純に、保険料を支払った時には所得から控除し(保険料負担分を課税対象から外し)、年金を受け取った時に所得に加算します(保険料相当分と運用益を課税対象とする)。結果として、運用益と保険料負担時の課税を年金受給時にまで遅らせたことになります。これと対極的な考え方は銀行預金に対する課税で、預金残高が増えたからといって減税されることはないし、預金を使ったといって課税されることもありません。課税は運用益(利息)に対してのみになされます。

年金受給者が実際に払う税金は?

 公的年金受給にあたっての所得課税は、保険料負担時に全額控除を受けながら、老齢年金には高額の控除が認められ、遺族年金・障害年金は非課税とされています。見直しされるとはいえ、老齢年金の年金控除額は140万円で更に老年者控除が50万円そして基礎控除の38万円と併せると200万円以上となり、国民年金はもちろん普通に厚生年金を受給していても課税されることはなさそうです。
 所得の発生を認識していながらその殆どを控除する、税制上こんな有利な制度はなかなかありません。特に、年金を受給しながら不動産収入や給料がある人にとって、年金控除は別枠なので余計に有利に機能しています。無年金者や国民年金受給者にとってはたいした意味はなさそうです。

公的年金運用の問題点

 後に残った最も解かり難いのが運用の問題です。制度全体の運用益は別にして、小さな所から考えると運用経費と運用益課税について。「社会保険」の常識として、公的年金の運用経費は全て公費負担だと信じきっていました。税は福祉とは一線を画すべきものと考えるし、そうすることで保険料負担の目減りがなくなり、個人年金・投資信託・確定拠出年金など運用手数料負担を求めずに済みます。正常化を望むだけです。
 個人年金だと受給の際に運用益が実現されたとして課税されるようです。投資信託だとその都度でしょうか。では、公的年金はと考えると、運用益という考えがあるのかないのか、少なくとも個人に属する運用益など前提にしていないようです。年金財政が大儲けしても何の課税もされることはないし、破綻しても控除されることはありません。

賦課方式採用について
   …積立方式+国庫負担で調整−−制度の信頼回復を

 角度を変えて賦課方式と積立方式について、「世代間の助け合い」として賦課方式を前提に多くが議論されています。私的には、制度の経緯からもその財政に於いては賦課方式を採らざるを得ないものの、運用計算においては積立方式を採ることは可能ではないかと考えています。国民年金では本人負担と別にある国庫負担で調整し、厚生年金ではこれに加えて事業主負担の一部を調整資金とし、個人ごとの積立計算による管理を明確にできるなら、自分自身の年金について損得計算をもとに制度の信頼を回復する方法もあるかと考えています。

年金資金の健全な運用を

 運用について私的な考えを蛇足すると、年金資金によるグリーンピアなどの施設設置には否定的ではありません。資金全体の運用益相当の利回りを長期に亘って確保できるなら、直接に事業を運営することもあって当然と考えます。長期の資金を分散して運用することは安全面から好ましいことです。厚生年金会館など運営実態について何も知りませんが、単に天下り先としてではなく責任ある経営者として、きちんと運用益をフィードバックする仕掛は整備すべきです。例えば、法人税相当分を年金財政に繰り入れるなど何か公的支援もできそうです。

その他の年金制度改善策は?

 他にも、遺族年金や障害年金の65歳打ち切り制、退職金に対する年金保険料の全額賦課、法人に対する実質的強制加入、所得税と年金保険料の徴収一本化、共済年金と厚生年金との遡及統一、国民健保と国民年金とのリンク、などなど思いつくことはきりがありませんが、考えるだけ非現実的になってしまいます。