No.3
 
JOHN SCOFIELD/ ROUGH HOUSE

enja CD 3033-2
John Scofield_guitar, Hal Galper_ piano,
Stafford James_bass,Adam Nussbaum_drums.
Recorded on Nov. 27, 1978
at Zuckerfabrik, Stuttgart (輸入盤)

 中古CDの1000円均一で発見。これは「ブルー・マター」のようなフュージョン路線ではなく、とことんコアなジャズ。かといって難解なところはなし。こういうジャズに出会えるとは、さすがenjaレーベルだと思います。実はこれを買ったとき、ジョン・スコフィールドのことを詳しくは知らず(さすがに名前は知っていたけど)、ピアノのハル・ギャルパーの名前を信じて買ったら、大正解。かったるいとこ全くなし。独特の疾走感に満ちています。
 彼は子どもの頃はブルースのギタリストをお手本にし、その後マイルスやコルトレーンを研究したということです。収録曲のほとんどが彼のオリジナルですが、内省的でありながら、重くない曲ばかり。これはスコフィールドの意図するところだと思います。 ピアノのハル・ギャルパーは、ライナーノートにも指摘があるように、マッコイ・タイナーを思い出すスタイルですが、それはとにかく、抜群のレスポンスを見せています。ギターのパートを聴きながらアドリブのヒントをため、自分の番になると、負けじばかりに炸裂させる感じなのです。スコフィールドのギターもそうですが、彼のピアノにも聴衆を圧倒する気迫があります。
 このCDについては、珍しくほとんど文句がありません。ベース、ドラムスも受けに回らず、食らいつくようなプレイです。この積極性をキープしながらも、全体的にまとまっていくのです。
 「ブルー・マター」のような聴きやすい作品もいいけど、本格ジャズ路線のこのアルバムのほうが、飽きが来ないでしょう。

CHARLES LLOYD/ VOICE IN THENIGHT

ECM POCJ-1447
Charles Lloyd_tenor sax, John
Abercrombie_guitar
Dave Holland_double-bass,
Billy Higgins_drums, perc.
Recorded on May 1998 at Avatar Studio
(国内盤/ポリドール)

 チャールズ・ロイドと言えば、ある程度の年齢のジャズファンは、1966年録音のアルバム「フォレスト・フラワー」を思い出すらしいです。彼のカルテットは、フラワームーヴメントの時代にただならぬ人気を誇ったという。さすがにその頃のことは文献で知るのみですが、このアルバムはジャズ喫茶で聴いて知っていました。彼のひげ面が写ったジャケットと、キース・ジャレット、セシル・マクビー、ジャック・ディジョネットという豪華なバック、極めて印象的な彼の曲。彼はこのカルテットで富と名声を得て、豪邸に住むようになり、有名な俳優たち(ピーター・フォンダ等など)を呼んで……という生活をしていたのが、突然田舎で隠遁生活をおくるようになったという話。そんな彼を音楽の世界に呼び戻したのが、最近他界したピアニストのミシェル・ペトルチアーニだった……。
 さっさとアルバムの紹介をすべきなのに、つい長々とエピソードを書いてしまいました。というのも、ロイドが音楽活動をやめてしまった理由については読んだことがなく、長年の謎だったからです。だから彼の別のアルバムのライナーノートに書かれたこの話を、私は引きずり込まれるように読みました。(アルバム名はECMの輸入盤「フィッシュ・アウト・オブ・ウォーター」、ボボ・ステンソンのトリオがバックをつとめています)
 前置きばかりが長くなりますが、こういう思い入れを引きずっているせいで、テレビにモントルーのジャズ・フェスに出ている彼が出ているのを見て興奮し、彼のニューアルバムを買ったわけです。ついでに例の名盤「フォレスト・フラワー」も一緒に。
 ニューアルバムにはその名曲「フォレスト・フラワー」も入っているたので、期待一杯でした。でも聴いてみたら、あまりのリラックスムードに拍子抜けしました。よく思い出せばテレビで見たライヴも、かなり静かなものだったのですが、思い入れのあまり判断力が狂ったようです。
 このアルバムが私のようなファンを狙ったものであることは言うまでもありません。しかし疑り深い私のことですので、それぐらいは気付いていたのですが、ギターのジョン・アバクロンビーの演奏にもかなり興味があり、どうしても買いたいと思ったわけです。  
 彼は何といっても、このピアノレスのカルテットの、注目の人物です。彼らしいまろやかな音は相変わらずで、魅了されます。でも彼には、もっと積極的に前に出るプレイをやって欲しかった。どうも大御所に合わせ過ぎの演奏に思えるのです。というか、彼まで一度引退したギタリストみたいになっている。よく聴けば、安直に出る音がひとつもない、いつもの彼の演奏ではあります。ただ、あと一押し、何か欲しい気がしました。
 こう思う理由には、昔のロイド・カルテットのピアニスト、キース・ジャレットの演奏と比較してしまう、ということがあります。柔らかなロイドのサックスとアバクロンビーの穏やかで豊かな音のコンビネーションは、それはそれで素晴らしいのですが、何か物足りない。それはかつてのロイドのぎらつくような激しさと、それに挑むようなキースの積極的な演奏を知っているためでしょう。
 チャールズ・ロイドがポスト・コルトレーンの一翼を担うサックス奏者だという紹介を読んだとき、あまり実感がなかったのですが、6曲目のHomageを聴いていると、インパルス時代のコルトレーンを連想しました。確かに似ています。でもロイドのほうが、伸びやかでしっとりした音で、コルトレーンのようにとことん重くはなりません。彼の奏でる音には朝靄を浮遊するような柔らかさがあります。
 私としては、大御所の円熟の演奏というよりも、ファンキーかつアヴァンギャルドな一面があった頃の彼をもう一度聴きたかったので、予想とはかなり違う印象を受けました。ただし何度も聴くと、ロイドとアバクロンビーのデリカシー溢れる音選びに感嘆します。チャールズ・ロイドには彼にしか出せない音があり、またそれに出会えたというのは、やはり嬉しいことでした。

GEORGE ADAMS & DON PULLEN
 / MUSIC EXCURSIONS

TIMELESS RECORDS _SJP166
George Adams_tenor sax, flute
Don Pullen_piano
Recorded on June 6 and 9, 1982
at SoundteckStudios, New York
(著者の音源は 国内盤/
Alfa Records, ALCR-49 廃盤 )

 ジョージ・アダムズ、ドン・プーレン(ピューレン)は、ともにチャールズ・ミンガスのグループのメンバーでした。彼らの演奏を初めて聴いたのは、「アット・カーネギーホール」です。これはかつてのミンガス門下の管楽器奏者達とともに録音したライヴ盤。ここでジョージ・アダムズは、唸り続け、吠え立てるフリーキーなサックスを吹きまくり、相方(?)ローランド・カークと延々とバトルをやっていました。1曲めはC Jam Bluesですが、途中でディジー・ガレスピーやコルトレーンのものまね(もちろん、賛辞をこめての)は出てくるわ、やりたい放題の展開になっています。それでいて、乗り乗りの楽しいアルバムです。プーレンのピアノは、2曲目の終わりあたりで彼らしく暴れてはいますが、ほぼ裏方に徹しています。
 その後もジョージ・アダムズの演奏はいろいろ聴きましたが、アヴァンギャルドで暴れまくりが得意のサックス奏者という印象(もちろんそれだけではないのですが)はかなり強いものでした。しかしこのMUSICEXCURSIONSでは、実に美しいメロディーをフルートで演奏しています。さらに、しっとりしてアーシーなゴスペル曲も聴かせてくれます。
 しかし、先のアルバムで聴いた彼の演奏のようなバトル的な演奏も、もちろん十分楽しめます。とくに1曲目では、ガンガン、ゴンゴンのピアノに、暴れるサックスが対峙する、緊張感溢れるフリー展開。ドン・プーレンのピアノは、こういう奇怪な音を出しても、卓抜なリズムに乗っており、ただ崩すだけではないのです。駈け抜けるピアノは、狂ったような激しさに満ちていますが、デリケートに、綿密に構築されています。二人のぎりぎりの即興勝負に、思わず力が入ります。
 この1曲でけっこう疲労する聴衆を予想してか、2曲めのゴスペルでゆったりとした気分になり、3曲目の軽快なフルートで明るい気分になってもらおうという、随分気配りの行き届いた選曲です。少なくとも私が聴くと、その通りの展開になりました。プーレンの流麗なピアノに、徐々に酔いしれていきます。
 とにかく、先鋭的なジャズでありながら、音楽の楽しさの提供は忘れないという、非常にバランスのとれたアルバムです。もちろん彼らのことだから、無理に迎合するところはありません。
 一癖も二癖もある二人が、これほど豊かなヴァリエーションを見せてくれるとは思いませんでした。快作だと思います。既に二人とも他界し、このコラボレーションももう見られませんが、誰かに継承してもらいたい、すばらしい世界です。
 ドラムスのダニー・リッチモンド(彼もチャールズ・ミンガス・カルテットに在籍)とベースのキャメロン・ブラウンを加えた、ジョージ・アダムズ=ドン・プーレン・カルテットの方にも、数々の名アルバムがあります。タイムレスレーベルのEARTH BEAMSでは、コルトレーンの賛辞を止まないアダムズの名演奏が楽しめます。
(MUSIC EXCURSIONSのアルファレコード国内盤は廃盤のようです。98年にテイチクから再度出たかもしれませんが、未確認。タイムレスの輸入盤はタワーレコード経由で入手可能とのことです。)


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