No.4
 
DARK BEAUTY/KENNY DREW

KENNY DREW-- piano , NIELS-HENNING ORSTED PEDERSEN-- bassALBERT "TOOTIE" HEATH-- drums
1.Run Away 2. Dark Beauty 3. Summer Nights 4. All Blues 5. A Felicidade 6. It Could Happen To You 7. Love Letters 8. Silk Bossa 9. Blues Inn 10. In Your Own Sweet Way 11. A Stranger In Paradise

 これはSteeple Chaseレーベルの有名な人気アルバムで、雑誌などでも頻繁に紹介された作品です。たいていは好意的な紹介ですが、岡崎正通・大和明共著「最新モダン・ジャズ決定盤」(音楽の友社/1994年発行)での、大和氏の評は随分手厳しいものです。ケニー・ドリューの演奏に対して多少の称賛はありますが、「万人向きの舌ざわりの良さを先行させたプレイ」といった言葉を容赦なく並べています。
 アルバム評の一部を引用しますと、「アップテンポの演奏でのドリューはどこかO.ピーターソンばりの大向こう受けのする乗り方で押しまくろうとする風潮が見られる上、アル・ヒースのパタパタするドラミングも興醒めだし、ペデルセンのベースももう一歩感情表現に深みが欲しいところだ」というものです。
 4曲目のAll Bluesを聴いてからこの評を読めば、つい、その通り!とうなずいてしまいますが、多少意見を述べたいと思います。この曲はアナログ盤A面のラスト曲になるため、アルバム構成上盛り上がりのあるアップテンポにしたのだと思います。メンバー3人が意気投合し、それなりに聴き応えがある演奏です。またN-H.O.ペデルセンのベースですが、このアルバムが彼のベストとは言わないまでも、快調な演奏を聴かせています。お馴染みの豊かで正確な音、ピアノとの掛合いの面白さ、歌心溢れる演奏に、思わず引きこまれます。
 得意技を適当に交え、ゴージャズで流麗なピアノを披露するドリューは、小難しいジャズにのめりこんだ者には、さほど面白くないピアニストと思えるかもしれません。しかしそれだけの理由で、この作品や、彼とペデルセンとのデュオ・アルバムなどを一蹴してもいいとは思いません。
 このアルバムは極めて統一感のある作品だと思います。ドリューが引き出すペデルセンのベース演奏の魅力も見逃せません。ただし何度となく聴き続けると、一応ダイナミックで緻密な構成のタイトル曲をはじめ、もう少し内的な掘り下げが欲しいと感じます。このあたりは大和明氏の評の通りです。彼のように忌憚のない意見は、時に極めて貴重です。
 ジャズをいろいろ聴くうちに、だんだんひねくれた趣味になり、こうしたストレートな趣向のアルバムはしばらく聴きませんでした。しかし久々に聴いてみるとけっこう楽しいものです。
 このDark BeautyのCD化の際に加えられたボーナス・トラックは、オリジナル収録曲を凌ぐ出来です。特にIn Your Own Sweet Wayは、このトリオにぴったりの名曲です。上記のようにこき下ろされたアップテンポのAll Bluesより、ずっと素晴らしいと思います。

(NIELS-HENNING ORSTED PEDERSENのORSTEDは英語圏の通称であり、正式な綴りでないことをお断りしておきます)

Eric Dolphy & Booker Little/
Memorial Album

Eric Dolphy-- Bass Clarinet, Flute, Alto Sax, Booker Little-- TrumpetRichard Davis--Bass, Ed Blackwell-- Drums, Mal Waldron-- Piano
1. Number Eight(Potsa Lotsa)2. Booker's Waltz
Recorded Live at Five Spot on July 16, 1961Prestige 7334 (LP)

 このライブ盤については、同日に録音されたAt Five Spot Volume 1と Volume 2の2枚ほうが有名で、volume1はスイング・ジャーナル選定盤です(多分、2も選定盤だった思いますが、未確認)。私が持っているのはVolume1と、この「メモリアル・アルバム」のLP2枚。個人的には、彼の代表作Out To Lunch(ブルーノート)やコルトレーンとの共演盤よりも、このファイヴ・スポットでのライヴ盤が気に入っています。
 メンバー一部(ベースとドラム)の顔ぶれから、フリー・スタイルに傾倒した展開を予想してもおかしくないのですが、61年発表のこのアルバムでは案外オーソドックスなスタイルを堅持しています。収録曲が2曲(17分と15分)なので、プレーヤー各自のソロパートが長めです。ブッカー・リトルの爽快感に満ちたトランペット、ドルフィーらしい癖のあるサックスやバスクラ、これを盛りたてる個性派リズムセクションの演奏は、何度聴いても素晴らしいのですが、演奏後の拍手は案外まばらで、この日の聴衆はいったい何人いたのだろうと思ってしまいます。
 このライブの後、ブッカー・リトルがほどなく尿毒症で亡くなったという話は有名です。享年26歳。「メモリアル・アルバム」1曲目のあと、拍手とともに聞こえるメンバー紹介をよく聴くと、ブッカー本人の声だと分かります。彼だと気付いたとき、決して会うことがないはずの人物に偶然出会ったような、不思議な驚きがありました。彼の晩年作という点でも注目のアルバムですが、それを忘れたとしても、オリジナリティ満載の貴重な作品です。
 ドルフィーもブッカー・リトルも伸びやかな演奏を披露しています。Number Eight は、例によってドルフィー独特の不思議なメロディーの曲ですが、これをサポートするバック3人のソロも絶妙で、特にマル・ウォルドロンのピアノはこの曲想にぴったりです。この店のピアノは、おもちゃのピアノのように時々音が歪みますが、それがまた面白いところです。ブラックウェルのマイペースでやや奇怪な(?)ドラムも、リチャード・デイヴィスのめりはりあるベースも好調。長い一曲を退屈させません。

 途中で店の電話が鳴ったり、2曲目の終り近くで、ドラム・ソロから2管が入るところがおかしかったり、多少のアクシデントがそのまま録音されています。これもライブならではの楽しさ、と割りきれるのは、全体の出来がいいからでしょう。
(このアルバムはCD化されていますが、ボーナストラック等は未確認です。)


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