No.5
 
Chick Corea-
Miroslav Vitous-
Roy Haynes
/TRIO MUSIC,LIVE IN EUROPE

Chick Corea-piano,Miroslav Vitous-bass,Roy Haynes-drums
1.The Loop(Corea) 2.I hear The Rhapsody(Fragos/Baker/Bard/Gasparre) 3.Summer Night(Dubin/Warren),Night and Day(Porter) 4.Prelude No.2(Scriabin),Mock Up (Corea) 5.Transformation(Vitous) 6.Hittin'It(Haynes) 7.Mirovisions(Vitous)
Recorded Sept.1984 in Willisau & Reutlingen ECM POCJ-2789

 このメンバーでのトリオについては、出発点となった1967年録音のアルバム'Now He Sings,Now He Sobs'から語るべきかもしれません。多くの批評家とファンが絶賛したこのアルバムは、緊張感と迫力に満ち、何度聴いてもスリリングです。この時の顔ぶれでトリオが再編されると聞いたファンがどれほど期待したかは、容易に想像できます。(残念ながら著者岡崎は当時ジャズと無縁の日々を送っていたので、このあたりは文献に頼るしかありません)
 このトリオは、81年にTRIO MUSIC というタイトルでスタジオ録音の二枚組アルバムを出した後、各地でツアー活動を行い、来日しています。ここに紹介するアルバムは84年のヨーロッパツアーでの録音で、前半はチックのオリジナルとスタンダード曲のトリオ演奏、後半は3人それぞれのソロと、全体の締めくくりと言うべきヴィトウスのオリジナル曲でのフィナーレ、という構成です。
 ライナーノートにもある通り、まずチックのピアノがキース・ジャレット風なのに驚きます。格調高く、クラシックに傾倒したピアノ。4曲目のソロでは穏やかなクラシック曲に始まり、徐々に得意のラテン風味のリズムが加わり、だんだん彼らしい演奏に発展し、'Armando's Rhumba'の小気味良い調べがファンの喝采を受けます。
 ベーシストのミロスラフ・ヴィトウスの複雑な陰影を刻むようなアルコ演奏を披露し、卓抜した構成力にはいつも圧倒されます。ロイ・ヘインズのドラムスも好調で、特にソロは絶品。空に過る余韻を構築するようなパーカッション演奏で、独特の立体感があります。録音もよく(好みの問題はあるでしょうが)、5分程度で終わるのは惜しいところ。

 最後はヴィトウスの重厚で繊細なアルコ演奏に始まり、Return To Forever時代のチック・コリアの世界と融合していく展開で、3人のアドリブが絡み、フィナーレを飾るにふさわしい作品です。ドラマチックな構成で、とくに難解さはありません。
 しかし、この3人にしかできないパフォーマンスにやっと触れたと思ったら、もう終りというのでは、やや物足りない感じがあります。前半のスタンダードの演奏は確かに素晴らしいのですが、ラストの曲に比べるとウォーミングアップ程度に思えます。
 数年後に出たAcoustic Bandの 'Alive ' との比較は難しいのですが、ストレートな完全燃焼的プレイを聴くには'Alive 'がいいと思います。一方このTrio Musicのライブも、クラシックへの接近から豊かな色合いと陰影が生まれた、味わい深い作品です。

(Oct.2001)
岡崎 凛

European Jazz Trio/CHATEAU EN SUEDE

Karel Boehlee-piano,Frans van der Hoeven-bass,Roy Dackus-drums
1.Eleanor Rigby(Mccartney) 2.Chateau En Suede(Senehal) 3.Roofie(Boehlee) 4.Baubles Bangles And Beads(Borodin) 5.Orange City(Boehlee) 6.What The Hec(Boehlee) 7.Nature Boy(Ahbez) 8.Passage Of Jaco(Young) 9.Beautiful Love(Young) 10.You Don't Know What Love Is(Depaul) 11.My Ship(Weill) 12.Gentle Brain(Boehlee)
Recorded at:Studio Zeezicht,Spaarnwoude,Holland.
Rec dates:27 and 28 August 1989

 購入したのは中古CDの国内盤(Alfa Music, Inc. ALCB-9513)ですが、Timeless Records のカタログを見ると、'Orange City'(SJP336)とほぼ同じ内容でした。(7曲目は国内盤のみ、曲順も異なる)
 ジャズ雑誌でよく目にするトリオだったので、一度聴きたいと思っていました。一曲目のEleanor Rigbyを途中まで試聴して、すぐ買う気になったのですが、家に帰って残りの曲を聴くと、随分印象が違いました。もっと聴きやすいと思ったのですが、意外に重たい音なのです。ジャケットの雰囲気とは違い、イージーリスニング的ではありません。しかし、かといってアヴァンギャルド的でも、難解でもありません。ライナーノートでは、ボエリーのピアノを、ビル・エヴァンズ、リッチー・バイラーク、スティーヴ・キューンとの関連で語っています。しかし、彼をこうしたピアニストたちの系列に並べようとしたとき、根底にあるものが何か違うように感じます。
 このアルバムが目指す音楽は、ジャズ臭を徹底的に排した、洗練されたジャズであるようです。「低体温ジャズ」という言葉が思い浮かぶほど、彼らの演奏は熱くありません。ほとばしるエネルギーは常に抑制されているようです。
 しかし一曲目でのピアノのアレンジでは、卓抜したセンスの良さに驚きます。細かい雨が降り注ぐようなピアノで始まり、重厚でスピードを押さえた「エリナー・リグビー」。控えめなドラムスのハイハットの余韻が効果的。こうした凝りに凝ったアレンジが、スイングジャーナル選定ディスクになっている理由かもしれません。
 クラシックの素養あるジャズピアニストはたくさんいますが、これほどジャズらしくないジャズピアノも珍しい気がします。それがこのトリオの個性かもしれません。ベースとドラムスは全体的に控えめで、ピアノ独走の感があります。
 このアルバムの録音からすでに12年が過ぎていますが、その後もEuropean Jazz Trio は着実にアルバムを出し続け、日本での人気も上々のようです。ピアニストが交替し、音楽的にどう変化しているかは、残念ながらまだ確認していません。

(Oct.2001)
岡崎 凛


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