No.12

The Earth Quartet/EQ

1.Four Arrows
2.Mingos Step
3.Morning Mist
5.It's Urgent
6.Nene
7.Sleeping Tiger
8.Milesmile
9.Living in Valley
10.Where has the Rainbow gone

Osamu Koike[小池修]t.sax
Makoto Aoyagi[青柳誠]piano
Koichu Osamu[納浩一]bass
Masahiko Osaka[大坂昌彦]drums

VICL-69093(aosis records)
recorded at Victor Studio/2003年

今年(2003年)の1月に友人に誘われてEQ (The Earth Quartet)のライブに行き、すっかり気に入って数ヵ月後のCD発売記念ツアーも聴きにいきました。各メンバーはすでにジャズというジャンルを超えて音楽業界のいろんな分野で活躍中とのことですが、このグループは、基本的にストレートアヘッドなジャズを演奏したい、4人のメンバー全員がリーダーとしての裁量を発揮できるようにしたい、さらには日本のジャズ・シーンを変えたい、などなどの熱い思いがこめられて結成されたとのことです。ライブステージでの演奏曲目はアンコール曲以外すべてこのアルバムの収録曲でした。CDと同じく一曲めを飾ったFour Arrowsは小池修のオリジナルで、彼らのテーマ曲のような作品。ライヴの方でも素晴しかったのですが、CDでの演奏も緊張感溢れ、ぐいぐいとリスナーを誘い込み、ふと風がやむように納浩一のアコースティックベースのソロが始まるという、練り上げた構成です。

前回Stan GetzのカルテットのCD評を書いたとき、なぜかこのグループのことを思い出したのですが、おそらく小池修のサックスのゆるやかで繊細な音と、これをリズミカルに追う青柳誠のピアノの音が、オーバーラップしたようです。そのときにも書きましたが、全体的にはさほど共通点はないのですが、メンバー間の綿密な協力関係を楽しめるという点では似ているかもしれません。児山紀芳氏のライナー・ノートにも、7曲目で「ゲッツへの傾倒ぶり」という表現があったので、何やらほっとしました。

全曲が各自のオリジナル曲ですが、かなり耳に残りやすい曲が多く、アグレッシヴな曲とゆったりとした曲、サックスのゴリゴリ感とスムーズ感が交互に登場する、極めてバランスに配慮したアルバムです。ちょっと大げさですが、この4人に限らず、日本のジャズプレイヤーは、いいオリジナル曲が書ける人がごろごろいるように思うのです。

ただ、彼らの演奏における数々の冒険が、すべてリスナーの感じるスリルに転化しているかというと、そうとも言えない気がします。演奏家でもなんでもない自分のようなリスナーには、正直言って、高度な勝負を楽しむのには限界があります。しかし、彼らが自らを追い込んでいく気迫、感性を総動員した反応は、そんな予備知識と無関係に心に届くもので、ライヴでもCDでもこれが一番の楽しみです。

いいアルバムだとは思いますが、スタジオ盤になるとどうしても、残すべき空白が少ない、技の缶詰めのような作品が多くなる気がします。迫力十分のスタジオ盤したいという思いは伝わるのですが、若干構成を重視しすぎの感があります。例えば大坂昌彦は、このアルバムでも縦横無尽のプレイを披露していますが、ライヴでは、ずらし、はずして、破綻のぎりぎりまでキープするドラミングに圧倒されたので、このCDでは最高の暴れ方を聴きたいと思ってしまいました。全く個人的な好みの問題なのでしょうが、できのいい演奏よりも、プレイヤーの生き様が見えるような瞬間に惹かれるほうなので、文句ばかりが増えてしまいます。

あれこれ欲を言えばきりがないかも知れませんが、力量十分の彼らの今後に、大いに期待しています。少し前まで自分がそうだったように、かつて70年代ごろの熱いジャズをよく聴いていたものの、今は休眠状態になっているジャズファンを呼び起こすような作品を、どんどん出してほしいと願っています。

(2003年11月 岡崎凛)

 

Redux '78/The Hal Galper Quintet

1.Introduction
2.Triple Play
3.My Man's Gone Now
4.Another Jones
5.I'll Never Stop Loving You
6.Tune Of The Unknown Samba
7.Shodow Waltz
8.This Is The Thing

Hal Galper(piano),Michael Brecker(tenor sax,flute),Randy Brecker(trumpet,flugelhorn),Wayne Dockery(bass),Bob Moses(drums)

Recorded live at Rosie's in New Orleans
Concord Jazz
[国内盤(ヴィクター)VICJ-101]

 

このライヴ盤は、録音は78年ですが、Hal Galperのクローゼットに長らく眠っていたものが、91年に発表されたということです(タイトルの'Redux '78'は『回帰・78年』というところでしょうか)。
長らくといえば、Hal Galperも長らくその才能を認められず、リーダー作が出せなかったということで、76年にSteeple Chaseレーベルから出た彼のリーダーアルバム、'Reach Out!'のライナーノートには、彼がいかに不運な10年間を過ごしてきたかが長々と書かれていました。Hal Galperは、今もさほど幸運な日々を送っていると思えない地味なピアニストで、Phil Woodsのバックをつとめていたことが知られている程度のようです。このCDも、現在は輸入盤のみ入手可能と思います。('Redux '78'もこの国内盤VICJ-101は廃盤)

しかし'Reach Out!については、かなり詳細な紹介文がネット上にありました。そこにも書かれていたように、70年代後半という時代の空気を感じる作品だと思います。こちらのドラムはBilly Heartですが、他のプレイヤーは同じで、アルバムとしてのまとまりはスタジオ盤のこちらがよいかも知れません。'Redux '78'はその後1年ぐらい後のライヴ録音で、Bob Mosesのドラムソロがやたら長かったり、演奏ミスがあったり、テンポが時々必要以上に速かったりしますが、アドリブの面白さでは非常に楽しめる作品です。また、Hal Galperの演奏も、全般にはこちらのほうがスムースではないかと思いました。

最初から彼のオリジナル曲でスタートし、ブレッカー・ブラザーズはソロに入るやいなや、早くもパワー炸裂。ブレッカー・ブラザーズ狙いでこのアルバムを買うのは、正しい選択だと思います。Hal Galperは2人にとって触媒のようなプレイヤーであったらしく、'Reach Out'でもジャズ路線ブレッカーズは異様なほど輝いています。

5曲目、I'll Never Stop Loving Youは、Hal Galper とMichael Breckerのデュオで、柔らかな光を受けるような表現から始まるのですが、Michael Breckerのソロは、ピアノの音が止むと、しばし曲から離れ、彼独特の重々しい、深い色合いの世界が垣間見えます。実は、個人的には、Michael Breckerの川面を眺めて思索するようなサックス演奏はあまり好きではありません。しかし、このアルバムで聴かせるような、曇天の重さとそれを振り切る激しさが交錯するような演奏は、非常に魅力的です。青空に突き抜けるような勢いのピアノに乗って、彼の複雑で重量感ある音が駆け巡る迫力が、このライヴアルバムの魅力です。

4曲め、Another Jonesでは、古風なオープニングフレーズに続いて、階段二段飛ばしで駆け上がるような、複雑でリズミカルなピアノ、これを受けて、ジャズ界の先人たちへの思いを込めたようなサックスとトランペット。 こういう演奏を聴くと、当時ニューヨークのライヴハウスでこのグループを見ようと長蛇の列ができたという、英文ライナーノートのエピソードに実感が湧きます。また、「体力ジャズ」という言葉がありますが、まさにこの言葉がぴったりの演奏です。

ここでのWayne Dockeryはもっぱらサポート役ばかりで、もう少し彼のソロが聴きたくなりました。Bob Mosesの最後の曲でのドラムソロは長すぎますが、観客は大いに湧いていました。パワフルに追い立てるドラムに、ピアノが猛然と挑むようなところが印象的でした。

7曲めのShodow Waltzは、Randy Breckerのソロが美しい曲です。日野皓正が同じ曲を演奏していた記憶があるので、比較して聴きたくなります。enjaレーベルから出た'Now Hear This'ですが、これも現在出回っていませんので、気長に出会うのを待っています。

(2003年11月 岡崎凛)


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