No.13

 

Soulive/Soulive

 

1.Aladdin
2.El Ron
3.Solid
4.First Street
5.Shaheed
6.Dig
7.One In Seven
8.Lenny
9.Turn It Out
10.Cash's Dream(bonus track on Japanese release)

Alan Evans (drums), Eric Krasno(guitar), Neal Evans(Hammond B3 organ,bass keys,clavinet)

Recorded on Oct 12-Dec 7 '02 at Chicago,NYC,Atlanta, NC,New Orleans
Blue Note TOCP-67138(国内盤 東芝EMI)

このグループのブルーノートレーベル発のスタジオ録音盤には、良質のフュージョンといった感じの曲調が多く、オルガントリオとしての不思議なグルーヴ感とスリルは後退した感がありました。やはりライブ盤を聴きたいという思いは募ったものの、なかなか発売されなず、満を持してだか、なんだか知りませんが、やっと出たときにはこちらの熱意も冷めていて、店頭で見てもすぐに買う気にもなりませんでした。今回はサックスなしということも、全く時期を逃していると思いました。はじめからサックスはゲスト程度の扱いでよいのにと、思っていましたから。

しかし、久々に前作の'Next'を聴いていると、つくづくライヴ盤が聴きたくなりました。'Next'は彼らの出世作でもあるのでしょうが、ヴェロアレーベルのデビューアルバムを聴いてからsouliveを好きになった自分には、のど越しすっきりのソフトドリンクよろしく、妙にまとまってしまって、物足りませんでした。波乱含みのままにどこまで進むかわからないエネルギーは、いったいどこに行ったのかという感じ。結局、国内盤のみのボーナストラックとなった最後のライヴ録音のTurn it outに聴き入ってしまいました。彼らのアルバムから聴きたかったのは、優等生的なジャズ・フュージョンではなく、アーシーであって、ファンキーであって、リスナーの周囲の風景を溶解させそうな音楽です。オルガンとギターが果てしなく蛇行していく。そこに正確無比に叩き込まれるドラム。だから、やはりライヴ盤が聴きたくなりました。

リフの魅力をイージーな手法と見てしまえば、彼らの魅力は語れません。音に運ばれるまま、ただ揺れるひとときを楽しむというのも、彼らの楽しみ方です。しかし、彼らのサウンドに夢中になれたのは、ただそれだけでありませんでした。肝心のライヴアルバム紹介の前に、言いたいことをほとんど書いてしまいました。一曲目、最初からドカンと音は大きいのですが、まあいつもの彼らの演奏。後半に入る頃には彼らの真価ともいうべきものに出会えた気がしました。後半に観客の声を呼び込んで13分近く続く'Turn It Out'。この曲は100回以上演奏しても、その度に何かが違うと思います。熱心なファンがどの程度満足するかは分かりませんが、とりあえず、実際のライヴの迫力はかなり再現されています。

ここ1年ぐらい、彼らの動向をまったく見ていなかったのですが、前作の'Next'で活躍し、日本のライヴでも爽快なプレイを聴かせたサックスのSam Kiningerは、グループを離れてしまったようです。彼がゲストとして適度に参加することで、面白みも出ると思うので、ちょっと残念に思いました。'Next'ではサックスを重視しすぎて、Eric Krasnoのギターの比重が減って寂しかったのですが、その後サックスが完全に抜けることになるとは、予想もしませんでした。

それはともかく、できることなら、いつまでも「何かやってくれそうなバンド」というイメージを維持してほしいし、CDでも結果も出してほしいと思います。安易な言葉でまとめきれないハプニングの予感が感じられなくなれば、ギター・オルガン・ドラムの凡庸な名人芸合戦になってしまいます。昔のオルガントリオを踏襲し、かつ脱却した彼らの路線を貫いてほしいものです。

リミックスのアルバムの方はチェックしていませんが、自分としては、最大限ナマ音に近いSouliveを、今しばらく楽しみたいです。

(2003年12月 岡崎凛)

  Circle Waltz/Don Friedman Trio

1.Circle Waltz*
2.Sea's Breeze*
3.I Hear A Rhapsody(Fargos-Baker)
4. In your own sweet way(Dave Brubeck)
5.Loves Parting*
6.So In Love(Cole Porter)
7.Modes Pivoting*
(*composed by Don Friedman)

Don Friedman (piano), Chuck Israels(bass), Pete La Roca(drums)

Recorded May 14,1962, New York City
VICJ-23559(Riverside RLP 9431)

Don Friedmanの代表作であるこのアルバムについては、すでに多くの論評があるので、前作で初リーダー作の'A Day In The City'について書こうと思ったのですが、録音状態があまりいいとは言えないので、見送っていました。'A Day In The City'の、心の揺らぎを丹念に描写するようなオリジナル曲は、シュールレアリストの撮影した古いモノクロ映画にぴったりかもしれません。これを聴いて想起されるのは、引っかき傷の走るフィルムの映像であり、薄暗い茫洋とした海の水面や、亀裂だらけの地面などです。

奇妙なモノローグのような演奏に軽快なジャズが挟まれるこのアルバムは、個人的には好きなのですが、現代クラシック音楽が嫌いだという人、録音状態にこだわる人にはお勧めできません。ただし、Don Friedmanの作風を知るには重要な作品といえるでしょう。

'Circle Waltz'のほうも、録音がよいとは言えないのですが、独特の作風、新鮮味と完成度を考えると、さほど気になりません。「ビル・エヴァンズと並ぶ俊才といわれ、その好敵手と目されたドン・フリードマン」という表現で始まる野口久光氏のライナーノートには、このアルバムや'A Day In The City'を世に送り出したプロデューサーOrrin Keepnewsへの賛辞が記されています。ただし、これ以降の作品はあまり売れなかったのか、しばらく彼のリーダー作は途絶え、Bill Evansのライバルというふれこみの割には、あまり輝かしい経歴とは言えないようです。

94年にConcordから発売された、Maybeck Recital Hallでのライヴ盤'at Maybeck'を聴いたときは、彼の健在ぶりにほっとしました。9曲収録のピアノソロのうち、スタンダードナンバーの演奏のいくつかは、流麗過ぎ、彼らしさがあまり出ていないと感じましたが、やはりオリジナル曲になると、陰影に富んだ独特の魅力が甦ります。ラスト曲のSea's Breezeの充実した演奏に、やはりこのピアニストの原点は'Circle Waltz'の頃にあるのかとと思ってしまいました。

'Circle Waltz'を初めて聴いたとき、「え、これビル・エヴァンズ?」と思ったのは自分だけではないようです。その後いろんな雑誌のDon Friedmanの紹介で、「Bill Evansよりもさらに知的な」という文句を見つけました。かなり曖昧な表現なのですが、つい、なるほどと思ってしまいます。しかし、何かにつけてBill Evansと比較された彼は、得をすることより損をすることのほうが多かったのではないでしょうか?

それはともかく、自分の持つ手数の多さを見事にコントロールするDon Friedmanの厳格なスタイルと、Chuck Isrealsの豊かな創造性、Pete La Rocaの的確なレスポンスに出会えるこのアルバムは、何度も聴けば当時のBill Evans trioと差異がはっきりしてきます。

両ピアニストをサポートしたChuck Isrealsは、Scott Lafaroの後釜ベーシストという印象が強すぎますが、'A Day In The City'で抽象画のような曲に挑む演奏を聴くと、かなりアヴァンギャルドな世界にも対応できる人のようです。

Pete La Rocaについては、ブルーノートでのリーダー作'Basra'を聴いた以外、あまり聴いていませんが、ここでの彼のプレイは、全身で反応し、抑制もはじけ方も文句なしです。

個人的に、1番人気のプレイヤーよりも2番、3番に関心を持ってしまうところがあるので、絶大な人気を誇るBill Evansよりも、彼の人気の影に隠れてしまった感のあるピアニストのアルバム3枚を聴いた(聴きなおした)わけですが、音の一番いいピアノソロもそれなりに良かったものの、なんとも皮肉なことに、ピアノもベースの音も完全に歪んだ'A Day In The City'が一番斬新な作品でした。けっきょくお薦め品というと、やはり一番人気の'Circle Waltz'に落ち着きそうです。

(2003年12月 岡崎凛)

参考作品:A Day In The City (Six Jazz Variations On A Theme)/Don Friedman Trio
(Riverside OJCCD-1775-2/RLP-9384),
At Maybeck/Don Friedman (Concord Jazz CCD-4608)


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