ジャズCD + Live 行き当たりばったり

No.21
 

Outside by the swing

Chihiro Yamanaka [山中千尋]

 
 

1. Outside By The Swing*
2. I Will Wait*
3. Impulsive (E.Elias)
4. He's Got The Whole World In His Hands(Traditional)
5. Teared Diary (Attends Ouva-T'en) (S.Gainsbourg)
6. Yagibushi-Revised Version- (Traditional)
7. Cleopatra's Dream (B. Powell)
8. Matsuribayashi/Happy-Go-Lucky Local
(M.Nakajima/D.Ellington/B.Strayhorn)
9. 2:30 Rag*
10. Living Without Friday*
11. Angel Eyes (E.Brent/M.Dennis)
12. All The Things You Are (O.Hammerstein II/J.Kern)
13. Candy (M.David/A. Kramer/J.Whitney)

(*composed by Chihiro Yamanaka)

Chihiro Yamanaka (piano)
Robert Hurst (bass)
Jeff 'Tain' Watts (drums)

Recorded at Avatar Studios, New York on May 13-15, 2005
UCCJ-2040 (Verve)

 

山中千尋の名前は何度も澤野工房のリーフレットで目にしていて、そのうち聴こうと思っていたのですが、けっきょく澤野工房の作品を聴くチャンスがないまま、このVerveレーベルでの新作を買ってしまいました。

久々に、スピーカーの前からじっと動かずに一枚を聴き通しました。最初、やや古風な作品かと思ってしまいましたが、これは大きな間違いで、徐々に彼女のマニアックな「攻め」の姿勢に引き込まれました。所々、男性ピアニストのダミ声が一緒に聞こえてきても不思議ではないような演奏で、彼女の赤いドレス姿のジャケ写真からは想像がつかない激渋路線。パソコンで、レコーディング中の“I Will Wait”(2曲目)を動画つきで聴くことができるので、演奏中の彼女を初めて見ましたが、口元が歌うように動く(声は聞こえませんが)のがよく分かりました。

気合十分のオリジナル曲に始まり、セルジュ・ゲンズブール作品の“Teared Diary(Attends Ouva-T'en)”では優雅で深みのある演奏を聴かせ(どことなくユーロジャズ風)、アルバム中盤での「八木節」のスリルに満ちた展開と、続く“Cleopatra's Dream”での低音のキレ味を堪能すれば、彼女の底力を知るには十分です。ただし、何かと文句の多い自分の好みから言えば、若干「頭で弾く」印象が気になり、9曲目の'2:30 rag'ではその技量に圧倒される反面、自分としてはこの辺で箸休め的に楽しく仕上げてほしいと思いました。(アルバムを通して聴く場合、集中力はここで使うよりも次の10曲目“Living Without Friday”で使いたいので)

あれこれ文句をつけてしまいましたが、世のBud Powellファンには是非彼女の“Cleopatra's Dream”も聴いていただきたいです。この曲への愛着と同時に、取るべき距離を弁えた彼女の姿勢を全面的に支持したいです。

Jeff 'Tain' Wattsについては、当然かなりの期待を持って聴いてしまうので、つい厳しい注文をつけたくなります(彼に対しては「いい仕事をしている」という程度では納得できないですね)。例によってドラムの音作りは細やかで、トリオのバランスを堅持して続々と勝負音を叩き出すのはさすがとしか言いようがないのですが、曲によっては、用意されたシナリオを越えて山中千尋のピアノと呼応しあう部分がもっとあっていいと思いました。

ただし5曲目の“Teared Diary(Attends Ouva-T'en)”のようなメロディアスで美しい曲での構成はやはり独特でしたし、アップテンポの10曲目“Living Without Friday”では、ドラムとピアノが攻め立て合う激しい展開に思わず聴き入り、身体に力が入りました。

Robert Hurstのベースを聴くのは初めてです。好サポートという域を超えた、素晴らしい反応を楽しませてもらいました。“Candy”でのアルコ演奏は特に印象的でした。

このアルバムを3回聴き、もしも彼女が“Wisper Not”を演奏したらぴったりだろう、などなど、想像を巡らせました。ピアノトリオばかりでなく、他の編成でのアルバムも期待したいです。特にタイトル曲はサックスを入れて聴きたいところ。

最後のメロディカの演奏が入った“Candy”はアルバム全体の中では異質な作品ですが、こうした楽しい演奏ももっと聴きたかったです。今回のアルバムは頭脳プレーが多いので、リラックスできる嬉しい曲でした。

(2005年10月 岡崎凛)

Outside by the swing

Live At The Village Vanguard

Uri Caine Trio

1. Nefertiti (Wayne Shorter)
2. All the Way (Jimmy Van Heusen)
3. Stiletto (Uri Caine)
4. I Thought About You (Jimmy Van Heusen)
5. Otello (Uri Caine)
6. Snaggltooth (Uri Caine)
7. Go Deep (Uri Caine)
8. Cheek To Cheek (Irving Berlin)
9. Most Wanted (Uri Caine)
10. BushWack (Uri Caine)

Uri Caine(piano)
Drew Gress(bass)
Ben Perowsky(drums)

Recorded May 23-25, 2003 at The Village Vanguard, New York, USA
Bomba Records (BOM24008) 原盤:Winter & Winter (910102-2)

昨日、家でお笑い番組を見ている息子と娘の会話を聞いていると、「笑いのツボ」という言葉を連発していました。この「ツボ」という言葉は大変便利ですが、便利すぎるのであまり使わないようにしています。自分の書くものは全て、こうした「ツボ」をめぐる雑談ですから。
現在の自分の「音楽のツボ」は、まずはバトル系かもしれません。この「バトル」というのも恐ろしく守備範囲の広い言葉ですが、最近何枚か聴いたピアノ・トリオの中では、このUri Caine Trioのライヴ盤がずば抜けて「バトル」要素が強いと思ってしまいました。ただしこれ以降は、この言葉は使わずにCDを紹介したいと思います。

1曲目がW.Shorter作曲のNefertitiなので、それだけでまず大喜びしました。自分の予想した展開とは全く違い、緊張感溢れる導入部はあまり長くなく、アグレッシヴに叩き込むドラムの追い風にぐんぐん乗っていくピアノのソロパートから、あれよあれよとばかりに繰り出される決め台詞。ここでのドラムは、トーンダウンせずに成立するものを目指しているようで、3人の演奏が絡まりつつピアノソロが展開します。やたらと動きの大きいピアノとドラムとは対照的に、緻密で内省的に音を選んだベースのパートが終わると、待ち構えていたように始まるピアノとドラムとの対話。それでもUri Caineの演奏としては、あっさり仕上がりすぎかもしれません。

かなり重苦しい雰囲気のテーマに、際限ない変化が目まぐるしく展開する3曲目、華麗にねじくれたブギウギ風に始まる4曲目、蔭りのある美しさに満ちた5曲目と、どれもUri Caineらしいですが、このアルバムで一番迫力があって面白いのは6曲目かもしれません。かなりとっつきにくいメロディーが強靭なリズムに揺さぶられ、驚くほど聴きやすく、ビシビシ決まる技に圧倒されます。

7曲目は最初しばらくスローペースな部分が精神集中しにくいですが、アップテンポになればだんだん面白くなっていきます。どうもこのピアニストはやりたいことが多すぎて、まとまりきらないところもあるようですが、あのリズムと上下動に乗ってしまえば、多少ついて行けない部分も気にならなくなります。9曲目もやはり少しヘンテコで、曲のゴツゴツ感と流麗な部分との対比がおもしろい作品。10曲目は、これぞUri Caineのユーモア炸裂というオリジナル曲。彼はジョージ・ブッシュが嫌いなんでしょうね。

いろいろな意見があると思いますが、彼の演奏を聴きながら、Herbie Hancock、McCoy Tyner、Don Pullenなどなど、いろんなピアニストを思い出すのもリスナーの楽しみかと思います。

このアルバムは、昨年出たのに、全く気づきませんでした。それも輸入盤だけではなく、Bombaレーベルから国内盤が出たとは!これでやっと少しは日本での人気が高まったのかと思いましたが、実態は全く分かりません。でもUri Caineをgoogleで検索すると、国内でかなりのヒットがあります(自分の書いたものは全くヒットしませんが…)。彼のCDを紹介しているblogは、たいてい自分にとって非常に興味深いCD紹介をしており、つい読みふけってしまいます。

ピアノ・トリオ作品はUri Caineの活動のほんの一部なので、クラシック(特にマーラー)に傾倒した作品や、ニュー・ヨークのダンス・ミュージック関連の人脈にもっと着目したいと思います。以前彼の参加したThe Philadelphia Experimentというアルバムを紹介しましたが、この続編が出れば聴きたいものです。

Uri Caineのオフィシャルサイト↓

http://www.uricaine.com/index.html

Drew Gressのベースは、他の2人に比べればやや突出感がありませんでしたが、彼の最新作である“7 Black Butterflies”というアルバムを探して試聴したところ、この人もかなりユニークな活動をするベーシストのようです。
試聴はありませんが、彼のオフィシャルサイトはこちら↓

http://www.drewgress.com/drew.html

ドラムのBen Perowskyも非常に活動範囲の広い人です↓

http://www.perowsky.com/

彼の参加する最新作(たぶん)は、ニュー・ヨークの精鋭ミュージシャンによる旬な作品です。
全くの脱線になりますが、彼のドラムが聴けるので、Eyal Maozというギタリストのサイトを紹介しておきます。新譜をストリーミング中で、現在トップページを開くと、ロック系、それもなぜかベンチャーズに近いようなサウンドが流れてきます。

http://www.eyalmaozmusic.com/live/

(なんとなく梅津和時のKiki Bandを思い出しました。)

2005年10月 岡崎凛)